大麦若葉

心の病気のための食物学コラム 第5回 大麦若葉の「心」への作用

副交感神経と脳に働きかける「大麦若葉の青汁」

樹木や草の葉の香りには人や動物をリラックスさせる効果があることは、多くの経験から知られていますが、実は、そのメカニズムは解明されていません。近年、ここに注目した実験・研究が進められ、興味深い報告がなされています。

そのひとつが、大麦若葉を対象とした研究です。大麦若葉は、味噌や焼酎の原料となるイネ科の植物オオムギの穂が出る前の若葉で、栄養価が高いことから「青汁」の材料にもしばしば使われています。2010年、国際臨床神経生理学会において、日本薬品開発株式会社と静岡大学らの研究チームは、大麦若葉を絞った新鮮なエキスの香りを吸入した多くの人が、副交感神経が活性化し、脳波におけるアルファ波の比率が大きくなり、リラックスした状態になることを発表しました。また、2012年の日本薬学会では、千葉大学大学院と日本薬品開発研究株式会社の研究チームにより、大麦若葉エキスが抗うつ作用を持つ可能性が示唆されました。この研究で行われたのは、大麦若葉エキスを経口投与したマウスと何もしないマウスを強制的に泳がせる実験です。経口投与したマウスのほうが、水に入れられてから泳ぎ始めるまでの時間が短く、ストレスを感じたときに脳内に分泌されるホルモンの量も少なかったそうです。つまりこれは、大麦若葉エキスの成分が、ショックや落ち込みから回復しやすくし、ストレス耐性を高めたと考えることができるでしょう。

前述のように、なぜこのような効果があるかについては、まだ研究段階です。しかし、大麦若葉に含まれる栄養素に、ビタミンB1亜鉛マンガンなどのほか、セロトニンと関係の深いトリプトファンも多く含まれていることとの関係性が推測されます。さらに、経口投与ではなく匂いでもリラックス効果が認められることから、何らかの揮発性物質が関わっていることもあり得ます。詳細は研究成果が待たれますが、うつ病の予防や改善、ストレス緩和に大麦若葉の「青汁」は有効な対策のひとつと考えて良いでしょう。

Top photo by James Cridland

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