暗雲の中にほとばしる雷光

心の病気の始まりに気づく パニックに見舞われる【体験談:前編】

前触れなく襲ってくる息苦しさと恐怖感

男性・57歳。大手出版社に勤務の後、29歳で独立。発症時は38歳。バブル崩壊後、仕事では事業を多角化し、プライベートでは離婚・再婚を経て子供に恵まれるなど、公私にわたり変化のあった時期だった。

「このまま死ぬかも…」という思いにとらわれる

打ち合わせでお客様のもとに向っていたときのことです。駅を降りて道を歩いていると、突然、呼吸困難に陥ったのです。肺に空気が入ってこない!そんな苦しさと混乱の中で、頭の中に浮かんだのは、「心臓か肺の悪い病気じゃないか」ということでした。そして、「このまま死ぬかも…」という思いにとらわれ、怖くて居ても立ってもいられなくなったのです。

歩くのもやっとの状態でしたが、どうにか近くの喫茶店に入り、「落ち着け、落ち着け」と思いながら座っていると、徐々に息苦しさや恐怖感は遠のき、30分ほどでいつもの状態に戻りました。もしかすると、そのときの様子を傍から見れば「この人、ちょっと気分が悪いのかな?」程度だったかもしれません。実際、発作がおさまったら、予定どおりに商談をこなすことができました。でも、発作の最中は本当に「死」を間近に感じたのです。

四六時中、どこにいても心が休まらない

このことをきっかけに、以後たびたび「パニック発作」に襲われるようになりました。ひどいときは1日数回。ゾワゾワとした何とも言えない不快感が身体の中から湧き上がってきたかと思うと、次の瞬間にはもう息ができなくなるのです。冷や汗が流れたり、気を失いそうになったりすることもありました。お客様との長時間の打ち合わせ中に発作を起こしたときは、自分を「鉄仮面」にして平静を装いましたが、本当につらかったですね。そんなふうでしたから、「今、発作がおきたらどうしよう」「次に起きるのはいつだろう」と、いつもおびえていました。

日常生活で特にキツかったのは、乗り物に乗っているときです。各駅停車の電車やバスならまだ大丈夫なのですが、長時間止まらない急行列車や新幹線、飛行機などは、降りたくてもすぐには降りられないと思うと、それだけで息がつまりそうになり、乗っている間ずっと極度に緊張していました。高速道路やトンネルも同じです。実際、家族旅行で高速道路を走っている最中に発作を起こしたこともありました。最寄りのパーキングエリアまで必死に車を運転し、1~2時間の休息を取って事なきを得ましたが、そんなことがあると行動範囲も狭まってしまいます。家にいても、「寝ているときに発作がおきたら…」と考えると眠るのも怖くなり、四六時中、心が休まるときがありませんでした。

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