どんな経過をたどるのか(体験談) パニックに見舞われる【後編】

どんな経過をたどるのか(体験談) パニックに見舞われる【後編】

病気を真正面から受け止めたときに、変化が!

男性・57歳。大手出版社に勤務の後、29歳で独立。発症時は38歳。バブル崩壊後、仕事では事業を多角化し、プライベートでは離婚・再婚を経て子供に恵まれるなど、公私にわたり変化のあった時期だった。

まずは前編を読む

薬を飲んで症状は軽くなったけれど…

仕事で打ち合わせに行く途中、突然、呼吸困難と強い恐怖感に襲われたことをきっかけに、数日後には1日数回も同じような症状が出るようになりました。最初は心臓や肺の悪い病気かもしれないと考え、内科を受診しましたが、検査結果は「異常なし」。でもそれは、何となく予想していたことではありました。実は、私の兄弟も似たような経験があり、その話から、自分も同じ症状なのではないかとも疑っていたのです。そこで、自宅近くにある大学病院の心療内科を受診したところ、ドクターから「ストレスじゃないですか?」と言われ、2種類の薬を処方されました。薬についての説明は特にありませんでしたが、たぶん安定剤だと思います。

今となっては考えられませんが、ひと昔前の病院は、診断や薬について患者に説明することはほとんどなく、言われるままに薬をもらって飲むのが「治療」だったのです。しかも、当時、日本で心療内科を設けている総合病院は数えるほどしかなく、クリニックに至ってはほとんど見かけませんでした。そんなわけで大学病院はいつもとても混んでいて、診察を受けてから薬をもらうまで5時間もかかりました。薬は2週間分しか出ませんでしたから、仕事が忙しいなか2週間おきに移動も含め通院に約6時間かけるのは正直キツかった。それでも通院していたのは、薬を飲むと症状は格段に改善されたからです。1日数回起きていた発作が、1日1回、2日に1回と遠のき、発作自体も軽くなりました。とはいえ、完全に良くなることはなく、いつ発作が起きるかという不安を抱えながらの生活は、変わることはありませんでした。

パニック障害では、発作はもちろんつらいけれど、発作を恐れて過ごすことはもっとつらいのです。「早くここから脱したい。この病気を根本から治したい。そのためには原因を知らなければ」と思い、あるときドクターに「なぜ私はこうなったのでしょう」と聞いたのですが、やはり「ストレスでなる方もいらっしゃいます」と言われるだけでした。病気になってから、自分の症状についてはいろいろ調べたので、ストレスが原因の一つだというのは知っていました。でも、当時の私は、バブル崩壊後のドン底からようやく抜け出し、プライベートでは念願の子供も生まれた時期。ストレスなどないと思っていました。今、振り返れば、数年前の大変な時期を乗り越えたことで、溜まっていたストレスが噴き出したのかなと考えられますが、当時はあまり納得できませんでした。ドクターが悪いわけではありませんが、「ストレスでなる方もいらっしゃいます」という要領を得ない言葉に、「通院すれば治る!」と信じる気持ちがみるみる萎えていったのです。

病気への理解から生まれた、ひとつの「決断」

初めてパニック発作を起こしてから半年。相変わらず、2週間に1度の通院は続いていました。病院に半日以上いても、そのほとんどは待ち時間。ドクターと話せるのはたったの5分で、症状を聞かれて薬を処方されるだけ。今ほど心の病気の研究が進んでいなかったこともあって、いろいろな質問をぶつけても納得のいく答えは得られないままでした。それで私は、これ以上同じことを繰り返すのが嫌になってしまったのです。薬を飲めば症状は抑えられるけれど、完全には治らない。いつも不安を抱えて過ごすことは変わらない。それなら、この病気を真正面から受け止めよう。発作はつらいけれど、本当に死ぬことがないのは今では分かっているし、来たらいつかは終わるのだから、抵抗せずに通過させてしまえばいい。「来るなら来い!」という心境で、通院をやめました。

薬を飲まなくなっても、不思議なことに症状は悪化しませんでした。すごく疲れていると「発作が起きるかも…」と不安になることはありましたが、そんなときは「起きても大丈夫!」と自分で自分に言い聞かせ、深呼吸をしたりゆったりした音楽を聴いたりしてリラックスにつとめると、いつしか不安は消えていました。そして、薬を飲んでいたときには週に何度も起きていた発作が、半年後にはほとんど起きなくなったのです。

その後19年が経ちますが、今に至るまでパニック発作は再発していません。あのとき薬をやめる選択ができたのは、発作を繰り返す苦しい日々のなか、心や心の病気について自分なりに調べたり、学んだりしたことが大きかったと思います。自分に何が起きているのか理解できたからこそ、思い切った決断ができたのです。私のとった方法が誰にでも有効だとは思いませんが、「治したい!」という意思を強く持てば、多くの人が自分に合った方法を見つけられるのではないでしょうか。

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