摂食障害の原因を示す医師

心の病気の症状別詳細【摂食障害】:摂食障害の原因

一つではない摂食障害の原因

これまで、摂食障害は心の問題ととらえられてきましたが、研究が進み、低血糖症や遺伝も関わっていることが分かってきました。主な原因には以下のようなものがあり、通常、いくつかの原因が複合して発症することが多いようです。

  • 過度なダイエット
    摂食障害を発症する原因として最も一般的なのが、過度なダイエットです。スリムであることが良いとされる昨今の風潮にも影響され、「やせればキレイ」「やせればモテる、仕事もうまくいく」という思考に支配されてしまうのです。そして、やせればやせるほど満足感が高まり、さらに、また太ってしまう恐怖から、拒食へと移行することも。思ったようにやせないストレスから過食に走る場合もあります。
  • 心的ストレス
    両親の不和や、学校・職場での人間関係の難しさ、仕事がうまくいかないなど、日常生活で強いストレスにさらされ続けると、ストレス解消の代償行為として過食をするケースは少なくありません。また、ハードな状況の原因が自分にあると考え、自分を責めることから拒食が表れることもあります。
  • 愛される実感の欠如
    摂食障害は、家庭環境にも大きく影響される病気です。子どものときに親(特に母親)から十分な愛情を受け取った実感がないと、自尊心が育たず、自分に対する無価値感を持つようになります。これが、「やせてキレイになれば愛される」という、間違った思考につながってしまうのです。
  • 低血糖症
    最近の研究により、低血糖症と過食との関連性が明らかになってきました。多量の糖を短時間に摂取して血糖値が急激に上がると、身体は血糖値を下げるホルモンのインスリンを分泌してバランスを保ちますが、インスリンが過剰に分泌すると血糖値を下げ過ぎてしまいます。これが低血糖状態です。低血糖状態になると、脳にエネルギーとなる糖を届けられなくなるため、危機感が高まった脳は摂食中枢を刺激して食行動を促します。これにより、食べても食べても満腹を感じることなく食べ続けてしまうのです。
  • 遺伝的要因
    摂食障害へのなりやすさには遺伝子的な要因もあることも、最近の別の研究から分かってきました。それによると、拒食と過食とでは関与する遺伝子が異なりますが、相互の関連性も認められているため、まったく異なる病気というわけでもないようです。

摂食障害になりやすい性格傾向は?

摂食障害になりやすい性格傾向の代表格は、完璧主義です。自分はつねに理想的な存在でなければいけないと考え、やせることでそれを達成しようとしたり、逆に、理想とのギャップに対するストレスから拒食や過食に走るのです。また、周囲の評価を異常なほど気にする、NOと言えない、何事にも自信がないといった性格傾向も、摂食障害の人に多いと言われています。これらの根本には、自己を確立できていない精神的な幼さがあります。自分というものが分からない不安を、世間が良いとするスリムな体型になることで解消しようとするのかもしれません。
もちろん、上記のような性格傾向の人が、必ず摂食障害になるということではありません。さまざまな原因とも相まって発症するもので、一筋縄ではとらえられないところが摂食障害という病気の難しさでもあるのです。

健康への過度なこだわりが生んだ「新摂食障害」とは?

近年、これまでとは違うタイプの摂食障害が増えてきています。それは、「体に悪い」と考える食品を徹底的に避ける食行為で、日本では「新摂食障害」と呼ばれていますが、正式には「正しい食欲」を意味するギリシャ語に由来して「オルトレキシア」という病名がつけられています。オルトレキシアは1997年にアメリカの医師により提唱されたまだ新しい概念で、アメリカ精神医学会の精神疾患分類マニュアルの最新版「DMS-5」にも掲載されていません。
オルトレキシアの症状をひとことで言えば「健康的で自然な食事への執着」で、オーガニック(無農薬有機栽培)の食材にこだわったり、添加物を使った加工食品や白砂糖などの精製した食品を徹底的に避けるといった食行為が表れます。これがエスカレートすると、自分が良いとする食事以外は食べられなくなり、栄養不良に陥るほか、拒食症や過食食へと移行することも少なくありません。精神面では、不健康だと思うものを食べる自分はもちろん、他人に対しても怒りや罪悪感を抱くようになります。このため、人間関係が難しくなってしまう傾向も出てきます。
オルトレキシアは完璧主義タイプの人がなりやすく、そのきっかけは「過度な健康志向」と言われ、「痩せたい」「太りたくない」という思いが動機となる従来の摂食障害とは異なります。生態学的な原因についてはまだ分かっていませんが、「健康のため」というもっともらしい理由があるぶん、自分の食行為の異常性を認めるのに時間がかかり、深刻化しやすいと言えるでしょう。

摂食障害についての詳しい情報は、下記もご覧ください。
摂食障害とは を読む
摂食障害の症状 を読む
摂食障害
のケーススタディ を読む
摂食障害の自己診断 [セルフチェック] を読む
摂食障害の改善ステップ を読む

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