冷蔵庫の前に立つ摂食障害の女性

心の病気の症状別詳細【摂食障害】:摂食障害の症状

“現れ方が複雑” な摂食障害の症状

摂食障害は、病態として大まかに分けると、食べられず低体重状態に陥っているのが「神経性無食欲症(拒食症)」で、食べるのがやめられず低体重状態ではないのが「神経性大食症(過食症)」および「むちゃ食い障害」です。「拒食」と「過食」および「むちゃ食い」は、病態としては正反対ですが、症状や合併症には両者に共通するものも少なくありません。症状の現れ方が複雑で、病態自体も変化することがあるため把握しにくい病気です。

食行動

ドカ食い・隠れ食い
【該当する摂食障害の種類】:過食・拒食・むちゃ食い
食欲をコントロールできず大量の食べ物を一気に食べますが、満腹感を感じられません。食べるところを見られたくないため、夜間に食べたり、引きこもって食べ続けるようになることも。なお、拒食症でもドカ食いの症状が出るというのは矛盾しているようですが、極端な食事制限で低栄養状態が続くと、反動でドカ食いに転じるケースは少なくありません。

 極端な食事制限・偏食・絶食
【該当する摂食障害の種類】:拒食
食事の量を極端に減らします。「トマトとコンニャクを1日500カロリーまで」といったように、食べる物や摂取するカロリーなどを自分の判断で制限し、偏った食事を長期間続けます。やせてくるとますます制限をエスカレートさせ、やがては食べたくても食べられなくなってしまいます。

排出行動

嘔吐・下痢
【該当する摂食障害の種類】:過食・拒食
太ることを恐れるため、食べた直後に無理やり嘔吐したり、下剤を使うなどによって、栄養が吸収されないようにします。拒食でほとんど食べていなくても、このような排出行為を行う場合があります。

チューイング
【該当する摂食障害の種類】:その他
食べ物を口に入れて咀嚼したのち、飲み込まずに吐き出す行為です。「噛み吐き」とも言われています。拒食とも過食ともつかないことから、分類上は「特定不能の摂食障害」の症状とされています。

その他の行動

過剰な運動
【該当する摂食障害の種類】:拒食
やせることを目的に、ジョギングをしたりスポーツジムに通ったりします。明らかに体力や体調は良くないにも関わらず、気持ちは元気でアクティブになります。

万引き・セックス依存
【該当する摂食障害の種類】:拒食
常に太ることへの恐怖感があり、強いストレスにさらされているため、そこから気をそらすために万引きなどの犯罪を犯したり、その場限りの異性交遊を繰り返すといった行動をすることがあります。

精神状態

イライラ・抑うつ
【該当する摂食障害の種類】:過食・拒食・むちゃ食い
摂食障害は、多くの場合、自分の食行動に罪悪感を持つようになります。このため、自分自身を責めて自己嫌悪に陥り、イライラしたり落ち込む(抑うつ)ようになります。長期化すると、本格的なうつ病に移行する場合も少なくありません。

注意が必要なさまざまな合併症

摂食障害による異常な食行動が続くと、さまざまな合併症を引き起こします。そこからさらなる不調を招いたり、一生つきあわなければならない障害となることもあるので、放っておかずに治療を受けましょう。

酸融症(歯が融ける)・虫歯
【該当する摂食障害の種類】:過食・拒食
嘔吐を日常的に繰り返していると、強酸性の胃液により歯の表面のエナメル質を溶かしてしまいます。これにより、虫歯や知覚過敏にもなりやすくなります。

 食道炎・食道裂孔・食道がん
【該当する摂食障害の種類】:過食・拒食
嘔吐を日常的に繰り返していると、胃液により食道が炎症を起こしたり傷ついたりすることがあります。これを放置しておくと、食道炎や食道がんのリスクが高まります。また、声が枯れたり、咳が止まらなくなることもあります。

胃けいれん・胃穿孔
【該当する摂食障害の症状】:過食・拒食
嘔吐を日常的に繰り返していると、胃に過度な負担がかかり、胃けいれんや胃穿孔(胃に穴が開く)を引き起こす場合もあります。

 唾液腺の腫れ
【該当する摂食障害の種類】:過食・むちゃ食い
過食で大量の食べ物を咀嚼すると、唾液が大量に分泌されます。これが長期間続くと、顎から耳にかけて3ヶ所ある唾液腺が腫れて、エラが張ったようになってしまいます。悪化すると瘤のようになることも。

 低血糖症・糖尿病・膵炎
【該当する摂食障害の種類】:過食・むちゃ食い
過食をする食べ物は、ご飯やパン、お菓子などの炭水化物が多いため、食べている最中に血糖値が急激に上がります。これを抑えるために膵臓からインスリンが大量に分泌されるということを繰り返すと、低血糖症になることも。さらに、膵臓に負担をかけることから膵炎になったり、低血糖症が長期化して糖尿病を発症する可能性もあります。

むくみ
【該当する摂食障害の種類】:過食・むちゃ食い
栄養バランスのとれた食事を規則正しく摂らなくなると、代謝がスムーズに行われなくなり、むくみが起きやすくなります。

 栄養不足による各種の不調
【該当する摂食障害の種類】:拒食
極端に食べない状態が続くと、少ない栄養でなんとか身体機能を維持するために、身体は過度な省エネモードになります。これにより、低体温や低血圧、ホルモンの分泌不足、脱毛などが起こります。また、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。さらに、各種の栄養が不足することで、貧血、冷え、骨粗鬆症、便秘、味覚障害、筋力低下、皮膚の乾燥、集中力の欠如、記憶障害など、心身にさまざまな不調が起こります。

 月経不順・無月経・性的能力の減退
【該当する摂食障害の種類】:拒食
女性の場合、低体重や体脂肪の低下といった「やせ」症状に伴い、生理のサイクルが乱れたり(月経不順)、生理が止まる(無月経)といったケースが非常に多く見られます。これを放置しておくと、不妊症になる可能性もあります。また、男性の場合は、性欲や性的能力の減退を引き起こします。

 不眠
【該当する摂食障害の種類】:拒食
タンパク質やビタミンB群が不足すると、睡眠を促すメラトニンが欠乏します。これにより、眠れなくなったり、生活リズムが乱れて昼夜逆転を引き起こしやすくなります。

この続きは「摂食障害の原因」をご覧ください。

摂食障害についての詳しい情報は、下記もご覧ください。
摂食障害とは を読む
摂食障害
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摂食障害の自己診断 [セルフチェック] を読む
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