「眠り」とは何か─2 眠っている間に何が起きているのか?

「眠り」とは何か─2 眠っている間に何が起きているのか?

眠っている間に何が起きているのか?

眠りと目覚めのメカニズム

私たちの身体は、起きているといずれ眠ろうとします。これが「睡眠欲求」です。起きている時間が長くなればなるほど睡眠欲求は強くなり、ついには意思の力ではコントロールできなくなって眠ってしまうのです。このとき、私たちは気づいていませんが、睡眠を促すために生体機能が総動員されています。たとえば、睡眠時、脳は休息のために温度を下げます。これは、コンピュータがオーバーヒート寸前になっているのを解消するため、スリープさせて温度を下げるのと同じ理屈です。眠りが必要になると、手足に血流が集まり熱を放出させて、脳を含めた身体の深部を冷やしていくのです。そして、「眠りのホルモン」とも呼ばれるメラトニンが、脈拍や血圧を下げることで、さらに入眠を促します。
いったん眠りに入ってしまうと身体の睡眠欲求は急速に減少し、疲労が回復すると消失します(ただし、マインドの睡眠欲求は、十分な睡眠をとった後も消失しない場合があります)。その後、いつも起床している数時間前になると、今度は体内時計の働きで副腎皮質ホルモンの分泌が始まり、脳の温度が徐々に高まって覚醒を促します。また、朝の光によって眠気を促すメラトニンの分泌も抑えられるため、より自然に覚醒するようになっているのです。
このように、身体の睡眠欲求と体内時計による覚醒力がバランス良く発揮されることで私たちは睡眠と覚醒を繰り返し、一定の生活リズムを保つことができるのです。

リズミカルに繰り返される2つの眠り

私たちの眠りは一様ではありません。一晩の間には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」がリズミカルに何度も訪れます。レム睡眠はいうなれば「浅い眠り」で、身体は休んでいても脳は覚醒している状態。ノンレム睡眠は「深い眠り」で、脳も身体も休んでいる状態を指しています。入眠後、最初に訪れるのはノンレム睡眠で、もっとも深いところまで眠りが到達すると、今度は少しずつ脳だけが覚醒し、レム睡眠へと移行します。このノンレム睡眠・レム睡眠の周期は90分ごとにおとずれ、一晩で4~5回繰り返されます。夜、寝入ったばかりの時はノンレム睡眠の割合が高く、朝方になるにつれてレム睡眠の割合が増え、覚醒しやすくなるのです。起床時間をレム睡眠のタイミングに合わせると覚醒しやすいため、6時間、あるいは7時間半後に起床時間を設定するとスッキリ爽やかに目覚めることができます。

睡眠のリズム

 

脳の働きから見た眠りの意味

レム睡眠中の脳は、実は起床時と同じくらい活発に活動しており、すべてが解明されているわけではありませんが、以下のような働きをしていると考えられています。

●大脳と肉体の休息
睡眠の最大の意味は休息です。身体は、じっとしているだけでもある程度疲労回復できますが、脳は眠らなければ休息できません。たとえ身体は疲れていなくても、日々の生活を送っているだけで脳の疲労はたまるので、眠って脳を休ませる必要があります。つまり、睡眠は日中の活動で疲れた脳のメンテナンスタイムという訳です。

●自然治癒力(免疫力)の向上と病気の予防
人間の身体にもともと備わっている自然治癒力(免疫力)は、血液中の成分、特に白血球とリンパ液が大きく関係しています。これらの成分は睡眠中に生産されるため、十分な睡眠をとることで血液がリフレッシュし、病気や病原体への抵抗力や免疫力を高めるのです。睡眠不足だと病気になりやすくなるのは、白血球などの生産量が低下するため。病気の時に「とにかく眠ることが大切」と言われるのは、ひとつには、睡眠によって白血球やリンパ液を増加させるためなのです。また、規則正しくリズミカルな睡眠をとることで内分泌のリズムが整い、交感神経・副交感神経の働きが整う効果もあると言われています(後日詳しい記事をアップ予定)。

●ストレスの解消
仕事や勉強、人づきあいなどで、日中はどうしてもストレスが蓄積していきます。ストレスを感じると脳には疲労物質がどんどんたまっていきますが、睡眠をしっかりとって疲労物質が除去されると、ストレスも軽減したように感じられます。多くの医師が「一番のストレス解消法は眠ること」と推奨しているほど、睡眠は効果的なストレス解消法。イライラやモヤモヤを感じたら、一度考えるのをやめてぐっすり眠るといいでしょう。

●老化防止
筋肉や骨格の成長や細胞の新陳代謝(生まれ変わり)を促す成長ホルモンは睡眠中に分泌されます。赤ちゃんや成長期の子どもにたっぷりの睡眠が不可欠なのはこのためです。成長ホルモンは、大人にとっても皮膚をはじめとする全身の細胞を活性化させてくれる大切なもの。肌や脳の修復・再生を促してくれるので若々しさを保つことができます。また、新陳代謝が活発になると消費エネルギー量もアップするので、脂肪を燃焼しやすい身体になり、成人病予防にもよく働きます。十分な睡眠をとるだけで、脳と身体の老化防止が期待できるのです。

●記憶の整理・定着
脳は、睡眠中にさまざまな情報の選別や定着、消去などの「整理整頓」を行っています。睡眠中は、ノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(浅い眠り)が交互に訪れますが、ノンレム睡眠(深い眠り)の時は主に嫌な記憶の消去と、仕事の方法や暗記といった学習内容の定着が行われます。一方、レム睡眠(浅い眠り)の時はいつ、どこで、どんなことがあったかという日常のエピソードの定着と過去の記憶との関連づけが行われ、必要な時に必要なことを思い出せるよう整理されます。つまり、眠ってからの脳は①嫌な記憶を消す→②学習した内容を定着させる→③日常のことを定着させる→④それらの記憶を整理するという作業を行っていることになります。
また、睡眠時の脳波(シータ波)は記憶や学習機能を向上させる効果があると言われているため、受験勉強などをする際も睡眠時間はしっかりと確保した方がいいでしょう。

次は…脳科学の視点でひも解く眠りの悩み

こころにいいもの・いいことサイト