眠りの悩み克服に向けて─1 脳科学の視点でひも解く眠りの悩み

眠りの悩み克服に向けて─1 脳科学の視点でひも解く眠りの悩み

脳科学の視点でひも解く眠りの悩み

「眠れない+理解されない」ダブルのつらさ

人の脳は、覚醒状態が続くと睡眠(休息)するようにできています。しかし、何らかの原因で十分に眠れなかったり、眠りに入るまでに時間がかかり、明け方になってようやくウトウトし出すと起床時間になってしまうこともあるでしょう。こうした状態が続くと、なかなか起きられなかったり、起きたあとも頭がぼんやりして注意力散漫になったり、記憶力が著しく低下するなどの悪影響が出てきてしまいます。睡眠時間が足りないため、本来は起きていなければいけないときに、睡魔に襲われてしまうこともあるでしょう。
こうした不眠の悩みを持つ人にとってつらいのは、「眠れない」ということに加えて、「眠れない悩みを理解してもらえない」ことです。毎晩問題なく眠れる人は、夜眠れないつらさも、日中眠気と戦うつらさも、あまりピンとこないものです。そのような状態に陥り、なかなか改善しないこと自体、甘えやサボり、自己管理能力の低さと捉えることが、決して少なくありません。眠れないつらさに加えて、眠れないつらさを理解されないつらさ。ダブルのつらさが不眠の悩みを持つ人を苦しめるのです。

眠りの悩みの種類と原因

眠りの悩みには、さまざまなパターンがあります。自分のパターンを把握して、正しい対処法を見つけましょう。

眠れない(不眠・入眠困難)

ベッドに入ってから寝付くまでに30分~1時間以上かかる場合は、「不眠」あるいは「入眠困難」です。ある統計調査によると、成人の8%は寝付きの悪さで悩んでいるという結果も出ており、かなりの人が不眠・入眠困難状態にあるといえます。不眠・入眠困難の主な理由としては次の3つが挙げられます。

  • ストレス
    ストレスは交感神経を刺激するため、ストレスフルな状態だと眠る時間になっても身体が休息状態にならず、スムーズに眠ることができません。
  • 体温
    通常、人の身体は眠る準備に入ると体温が1℃ほど下がります。体温が下がることで脳と身体が「休息するのだな」と認識するため、スムーズに眠ることができるのです。ところが、夜遅く食事を摂ったり(消化活動で熱が発生)、お風呂の温度が暑すぎたりして体温が下がらないと、寝つきが悪くなります。
  • 体内時計のズレ
    体内時計(生体リズム)が後方にズレていると、身体はまだ眠るタイミングではないと認識するため寝つきが悪くなります。

途中で起きてしまう

寝つきは良いのに、夜中や明け方に目覚めてしまう場合は「中途覚醒」です。眠りが浅くなるレム睡眠のタイミングで目覚めてしまうことが多いようです。夜中に2回以上目覚める日が週3回以上あれば中途覚醒の疑いがあります。レム睡眠は90分周期で訪れるため、眠ってから3時間後、あるいは4時間半後に目覚めることが多い人も、途中覚醒の疑いがあります。途中覚醒の原因には次の5つが挙げられます。

  • 生活習慣
    夜遅い食事と寝る前の飲酒は中途覚醒の大きな原因です。遅い時間に消化活動で胃を働かせると、身体が休息モードに切り替わりません。同様に、アルコールは交感神経を刺激するため身体が覚醒状態になってしまいます。
  • 寝具
    横たわった姿勢は一見すると楽に見えますが、実は首、肩、腰などに体重がかかっています。身体に合わない寝具は、時間とともに体重の負荷を「痛み」としてしまい、途中覚醒の原因になることがあります。身体が沈み込むほど柔らかい、あるいは腰や肩に体重が集中して痛くなるほど硬いベッドや敷布団、高さが合わなくて首に負担がかかるような枕を使っていないか、一度チェックしてみましょう。使い始めた時に具合が良くても、使っているうちに硬さなどが変わっている場合もありますので、改めてチェックしてみると良いでしょう。また、自分ではなかなか分からないときは、寝具の専門家に相談してみることをおすすめします。「寝具 コンシェルジュ」「枕 コンシェルジュ」などで検索してみてください。
  • 年齢
    人は一晩にレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しますが、加齢によってノンレム睡眠は減少します。その原因は明確には分かっていませんが、「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンの分泌量が減るためだと考えられています。いずれにしても、そうなると必然的にレム睡眠が増え、起きやすくなってしまうのです。
  • 睡眠時無呼吸症候群
    睡眠中に10秒以上呼吸が止まる「無呼吸状態」が、1時間に5回以上または7時間に30回以上ある状態を、睡眠時無呼吸症候群と言います。眠っている間に呼吸が止まり、危機を感じた脳が覚醒するという症状です。「目が覚めた」という自覚症状がない場合も多いのですが、レム睡眠時の際に起きると、はっきりと目覚めます。「いびきをかく」「寝汗をかく」「起きたときに口が渇いている」「熟睡感がない」「日中強い眠気や倦怠感がある」「いつも疲労感がある」「集中力が続かない」などの症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるので、専門医の診察を受けることをおすすめします。
  • 周期性四肢運動障害
    寝ている時に手足が動くことを「周期性四肢運動障害」と言い、手足が動くことで脳が覚醒します。しかし、ほとんど場合は手足が動いたことを認識しないため、「理由もなく目覚めてしまった」と思うのです。

過眠症(寝過ぎる)

1日に10時間以上も睡眠が必要だったり、しっかり寝ているにも関わらず日中強い眠気に襲われる症状を「過眠症」と言います。過眠症の症状で代表的なのは「ナルコレプシー」で、毎日のように猛烈な眠気に襲われ、それが長時間続きます。また、身体の力が急に抜ける「情動脱力発作」が起こるのも特徴です。日本では約20万人いるとされ、原因としては遺伝やストレス、オレキシンAというたんぱく質不足などが挙げられています。

「悩まないこと」が克服への早道

眠りの悩みの辛さは、眠れないという状態はもちろん「皆が当たり前のように眠っているのに、どうして私はうまく眠れないのだろう」と思い悩むことにあります。それがストレスとなり、適応障害を引き起こすこともあるのです。
適応障害とは「ストレスが原因となって引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されており、併発する症状としてはうつ病、アルコール依存症、強迫性障害、PTSD、摂食障害などがあげられます。こうした症状の多くはリラックスして脳を十分に休める必要がありますが、そもそも眠りの悩みが発端となっているため解消が難しく、どんどん悪循環に陥ってしまいます。
眠りの悩みを克服するためには、あまり思い悩まないことが大切です。「眠ろう」と無理に思わず、リラックスできる状態にもっていきましょう。リラックスするための具体的なアイデアについては、「眠りの悩みを改善する10の方法」を参考にしてみてください。

次は…眠りの悩みを改善する10の方法

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