夜なのに覚醒して眠れず、刻々と時間が過ぎていくシーン

「眠り」とは何か─1 人間は眠らなかったらどうなるの?

人間は眠らなかったらどうなるの?

人間の眠りと文明社会

哺乳動物は必ず眠ります。人間だけでなく、他の哺乳動物も眠ります。ノンレム睡眠(身体も脳も眠っている状態)とレム睡眠(身体は眠っていても脳は活動している状態)とを交互に繰り返す点はみな同じですが、他の哺乳動物と人間とでは睡眠のパターンが大きく異なります。
たとえば、身近な動物では猫が1日14時間眠りますが、ずっと眠り続けているわけではありません。ウトウトと短い眠りを繰り返し、トータルで14時間の睡眠をとっています。このように、1日に何回も眠るパターンを「多相性睡眠」と言います。一方、人間は1日1回長時間眠ります。これを「単相性睡眠」と言いますが、この単相性睡眠のパターンで眠る哺乳類は人間だけ。生き物としての眠りのスタイルは、実は非常に特殊なのです。
なぜ、人間だけがこのように特殊な眠り方をするようになったのでしょうか? それは、人間が文明社会を手に入れたから。組織や規律の中で集団生活を送るようになったことで、皆が同じ時間に起きていることが必要になったのです。また、人間は夜間、視力が極端に落ちてしまいます。それで、必然的に活動は明るい日中になり、危険で動けない夜間はまとめて睡眠をとるという生活パターンが出来上がったのです。
その後、人間は電気を手に入れて夜の闇を克服しました。そして、24時間ノンストップで経済活動が行われ、インターネットで世界中と瞬時につながる現代、社会生活はさらに変化しました。夜遅くまで活動したり、昼間休息して夜間に働くなど、自然のリズムとは異なるサイクルの生活が可能に(あるいは強いられるように)なったことで、人類の長い歴史の中で形成された睡眠パターンから外れる人が増えてきたのです。

イライラ、落ち込み、感情の欠如…それは睡眠不足かも?!

では、人間は眠らなかったらどうなるのでしょうか?
ギネスブックには、アメリカ人の高校生が264時間(11日)もの不眠に耐えた記録があります。それによると、不眠2日目に目の焦点が合わなくなり、立ちくらみなどの症状が出はじめました。5日目からは思考力や記憶力、集中力の低下が見られ、イライラしたり急に落ち込んだりして感情のコントロールができない状態に。幻覚も現れました。さらに、9日目過ぎからは手足震えて無表情になり、まとまった話ができなくなくなったそうです。
眠らないということは、脳を一切休ませないということです。脳を休ませないと、認識力や身体機能にどんどん異常が出てくることが、この危険な実験からよく分かります。
しかし、逆に眠りすぎも良くないとされています。最近の研究で、8時間以上眠ると中性脂肪が、増え善玉コレステロールが減少するという報告もあり、これにより高脂血症、高血糖、肥満、糖尿病、さらには、うつ症状や認知機能低下のリスクも高まるとも言われています。眠り過ぎて頭がぼんやりしたり、頭痛になったりした経験がある人も少なくないでしょう。睡眠時間は、少なすぎても多すぎても不調の原因となりえます。「正しく眠ること」は、なかなか容易ではありません。

あなたの脳は大丈夫? 脳の疲労度をチェック

十分な睡眠をとれない状態が続くと、脳の疲労が蓄積し続けます。すると、単純なミスを繰り返したり、やらなければいけない作業に集中できなくなったりといった状態になります。そんなメカニズムを利用した脳の疲労度テストが、アメリカのフロリダ睡眠障害センターのWEBサイトで公開されています。
テスト方法は、画面に赤い文字が表示されたらなるべく早く画面をクリックするだけ。5分程度続けることで結果が出ます。健全な状態であれば、平均して200〜300ミリ秒でクリックすることができます。しかし、脳が疲れているとすぐに集中力が途切れてしまうため、反応時間が長くなったりクリックし忘れたりしてしまいます。簡単なテストなので、ぜひ一度チャレンジしてみてください。

http://www.sleepdisordersflorida.com/pvt1.html#responseOut

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