心と運動の関係─1 心に与える驚くべき運動の効能

心と運動の関係─1 心に与える驚くべき運動の効能

適度な運動は薬と同程度の効果を発揮する

運動生活習慣の予防と改善に役立ち、食事や睡眠と並んで健康に欠かせない要素です。さらには近年になって、心の病に薬物治療と同等の効果を発揮することが分かってきました。2000年にフィンランドで発表された論文によると、25〜64歳のフィンランド人3,403人を対象にした調査では、週2〜3回以上運動をする人は、それ未満の人と比べて主観的健康感が高く、精神状態が良好であるという結果が出ています。また、約19,000人のオランダ人を対象に行われた別の調査でも、1週間の合計で60分以上の運動習慣のある人は、そうでない人に比べて抑うつや不安の程度が低く、細かいことにこだわらず外交的で積極性も高い傾向を持っていることが多いことが判明しました。

運動は習慣的に行っていなくても、気分が沈んでいる、不安感が強いというときに一時的に運動をするだけでも、不安の軽減に役立ちます。2009年に発表されたA.Deslandesらのチームが行った研究では、強迫性障害に悩む15名の男女に1回20〜40分間の有酸素運動を行ってもらったところ、その前後で不安、抑うつ気分、強迫観念が軽減する様子が認められています。運動を取り入れることは、体を鍛えたり、生活習慣病を予防したりするだけではなく、心の健康の維持や心の病気の改善にも高い効果が期待できるのです。

運動療法のメリット

心の病気の治療には、薬物治療認知行動療法各種セラピーなどのさまざまな手法があります。それらと比べて運動療法には以下のようなメリットがあります。

●お金がかからず、日常的に実践しやすい
運動が治療法としてもっとも優れているところは、日常的に実践できる手軽さです。軽い運動ならウォーキングサイクリング、家のなかで踏み台昇降スクワットをするのであれば、特別な器具や環境は不要で、お金もかかりません。そのため、自分の体調や気分に合わせて運動の時間や程度を選ぶことができます。

●再発を防ぐのに有効
うつ病などの心の病気は、寛解(かんかい)の状態に至ったからといってすぐに安心できるわけではなく、再発に注意しなければいけません。有酸素運動は、再発の予防にとても有効だと考えられています。ある調査では、うつ病が寛解した人のなかで再発した人の割合は、運動を治療に取り入れていた人のほうが少なかったことがわかっています。

●副作用のリスクがない
薬物療法との大きな違いであり、心身への負担を考えたときの大きなメリットが副作用のリスクがないことです。また、薬が効きにくい人でも運動療法は有効です。

●生活習慣全体の改善につながる
運動療法を実践することで体力が向上するため、治療のために休職している人がスムーズに復職しやすくなります。また、運動によって睡眠の質が上がり、肥満や高血圧といった生活習慣病の予防や改善にもつながることで、心と体双方の面から健康になります。

心の病気の治療や改善が目的の場合、激しい運動、特別なトレーニングを行う必要はありません。手軽にできる運動を習慣にすることは、心身の健康を育み、ストレスなど心の病気を引き起こす原因を遠ざけることができるのです。

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