心に働く運動:フラ(フラダンス)

リズム運動と癒しの音楽でセロトニンを活性するフラ

私たちの脳の中で働くさまざまな神経伝達物質。その中でもメンタルヘルスと深く関わっているのがセロトニンです。精神を安定させて、幸福感を高めてくれるセロトニンは、同時に神経を興奮させるアドレナリンや喜びや快楽を司るドーパミンの働きのバランスをとる役割を担っています。心の健康を取り戻し、維持するためには、セロトニンが脳で正常に働くことが不可欠です。そして、運動においてこのセロトニンを活性化してくれるのが、「リズム運動」です。リズム運動は、一定のリズムを続けることを重視した運動で、身近なものには咀嚼や呼吸があります。
そして、このリズム運動を代表するもののひとつが「フラ」です。

フラは、大きく分けて2種類あります。
現代フラともいえる「フラ・アウアナ」と、古典フラといえる「フラ・カヒコ」です。
「フラ・アウアナ」は、欧米の音楽や楽器を取り入れ、ハワイ調の美しい旋律のなかで自然への感謝や男女間の愛の要素を含む踊りが特徴。現代フラとも呼ばれており、私たちが、一般的に「フラ」をイメージするときには、こちらの「フラ・アウアナ」を思い浮かべています。
一方、「フラ・カヒコ」は、神様に捧げるものとして踊られていた儀式的な意味合いが強い神聖な踊りです。最初に詠唱を行い、チャンターが唱える歌と打楽器のリズムに合わせて踊るなかで、自然や神に対する感謝や信仰の思いを届けていました。

フラは一見、ゆるやかな優しい踊りに見えますが、音楽に合わせたリズム運動であり、全身の筋肉をまんべんなく使う有酸素運動です。リズム運動によって、筋力がアップすれば代謝が上がり、太りにくい体づくりができますし、有酸素運動によって内臓脂肪を減して生活習慣の予防にも効果的です。
また、続けるごとにボディラインが引き締まっていきます。とくに中腰の姿勢が多いので、下半身が鍛えられますし、腕をあげる振り付けでは二の腕の引き締めに効果的です。

こういった運動効果に加えて、心への影響も非常にポジティブなものが多いフラ。その動き一つひとつが山や海、花など自然や気持ちを「手話」で表現しているため、踊りながらそこに込められた意味を理解すること、指先の表現にも気をくばることで、脳の活性化にもつながります。また、波や風の音など、ハワイの大自然を感じられる、ゆったりとしたハワイアン音楽は心をリラックスさせてくれます。フラがもたらすリズム運動と音楽の力は、セロトニンを活性化し、メンタル面にもよい影響を与える運動として、たくさんの魅力があるのです。

フラの中核にある精神「ALOHA」とは?

現代フラ・古典フラに共通して言えることですが、フラは、ハワイに伝統的に伝わる神聖な踊りで、神や自然界とのつながり、感謝を表現するものとして生まれました。フラは裸足で踊ることも特徴ですが、これは大地とつながることで大地からのエネルギーをいただくという意味をもっています。

こうしたフラの中核にあるのが「ALOHA(アロハ)」の精神です。ハワイの挨拶語と認識している人も多いかもしれませんが、実はそれだけではありせん。すべてを受け入れる「心」や「精神」であり、「思いやり」・「尊敬」・「愛」をもって人に接することを意味します。

もともとは


A=Akahai(思いやり)

L=Kokahi(調和)

O=Olu’olu(喜び)

H=Ha’a Ha’a(謙虚)

A=Ahonui=(忍耐)

という5つのハワイ語の頭文字を組み合わせたもので、「思いやりと素直な心をもって他者に感謝し、慈悲と愛情を与え幸福を分かち合う」ハワイアンスピリットを象徴する言葉でもあります。

フラは、ほかの一般的な踊りに比べると神や自然、人々と愛を持ってつながるという精神的な意味合いを強く踏んでいる踊りです。そのため、フラを踊ることは自分の中に失われているさまざまなつながりを取り戻すきっかけにもなるのです。

メンタルヘルスのためにフラを習うには?

今、日本では趣味としてフラは高い人気を誇っています。そのため、さまざまなフラ教室がありますが、目的や費用などを考慮して決めるようにしましょう。たとえば、フラダンススクールなど専門の教室やスタジオでは、健康増進というよりも練習を重ねて大会に出て発表することが大きな目的となっていることも多く、衣装代がかかることもあります。また、フラの歴史を学ぶなど、ダンス以外の勉強なども必要になってくることもあります。

フラを簡単に踊ってみたい、メンタルヘルスや健康のために習ってみたいという人は、まずはカルチャースクールやスポーツジムのプログラムなどが初心者も参加しやすくおすすめです。こういった場所では、短い曲を簡単な振り付けで踊ってみるといったことがよく行われているので、フラを運動として取り入れやすいのが特徴です。とても奥の深いフラ。もし、踊ってみてもっと掘り下げて学んでみたいという場合は、専門スクールなども検討するといいでしょう。

Photo credit: fd on VisualHunt / CC BY-NC

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