心に働く運動:ウォーキング
ウォーキングは特別な装備が必要なく、老若男女が手軽に始められるポピュラーな運動です。生活習慣病の予防やダイエット効果が期待できるほか、最近の研究ではうつ病や不安障害、パニック障害、PTSDなどの精神疾患の緩和にも効果を発揮することがわかってきました。40分のウォーキングを週3~4日程度行うのが目安ですが、まずは身体への負担が少ない1日20分程度から始めるのがおすすめです。
ウォーキングが心に効く理由
- うつ病の症状改善が期待できる
英スターリング大学がおこなったウォーキングとうつ病に関する研究では、ウォーキングがうつ症状の改善に大きな効果をもたらすことが明らかになったとの結果が発表されています。また、カナダのトロント大学の研究では、20~30分のウォーキングで軽度のうつ病であれば改善する可能性が十分にあるという報告もなされています。
- 脳内物質が分泌される
一定時間ウォーキングを継続すると脳内に幸福感を高めるドーパミンやβエンドルフィン、精神の安定に関わるセロトニン、ノルアドレナリンなどが分泌されます。これによりストレス反応や不安が調節され、精神疾患症状の緩和に効果が期待できます。
- 血流が改善する
ウォーキングにより下半身の筋肉を使うことで、全身の血流が改善され、内蔵の働きも活発化し、代謝がよくなります。引きこもりがちな場合は、体力向上をサポートし、精神疾患による身体合併症や肥満予防にも効果が期待できます。
- 副作用のリスクが少ない
ウォーキングは、薬物治療のような副作用がありません。薬が効きにくい人や妊娠中で薬物服用がためらわれるような場合であっても、ウォーキングなら安心して始めることができます。
また、外で過ごすだけでも気晴らしになり、精神状態を改善させる効果があるとする研究もあります。まずは気負わず、軽い散歩感覚で始めてみるのもよいでしょう。
ウォーキングを始めるにあたって
- 靴
最初は普段履きのスニーカーでもよいかもしれませんが、足にマメができたり、靴擦れを起こす可能性もあります。足への負担を減らすため、足にフィットするウォーキング用のシューズがおすすめです。
- 服装/装備
歩きやすい服装がおすすめです。ウォーキングは有酸素運動なので、たくさんの汗をかくため、むれにくく、速乾性のあるアンダーウェアがあるとベターです。タオルや脱水防止のための飲料の携帯は必須です。また、時計でタイムを計ったり、万歩計をつけて歩くことで成果が目に見え、モチベーションアップにつながります。
- ウォーミングアップ
まずはアキレス腱やふくらはぎ、太ももを伸ばすなどのストレッチを──気持ちの良い程度から。
- 歩き方
せっかく歩くのですから、フォームを意識して歩いてみましょう。無意識に歩くよりも運動効果がアップします。背筋を伸ばし、できるだけ歩幅を広くすると、自然と視線が前に向き、かかと着地ができるので、きれいなフォームで歩くことができます。
- 歩くペース
最初は普段歩く(ラクに歩ける)ペースから始め、慣れてきたら「ちょっときついな」と感じる早歩きにペースアップしてみましょう。
- 注意点
無理をしないこと。初日に頑張りすぎて次第にフェードアウト…というのが一番残念です。目標を定めるのもいいですが、それが義務になると負担となってしまい、続きません。ひと駅分歩く、とりあえず1日5分だけ、コンビニまで歩くなど、ちょっとしたことでもいいのでまずは続けることが肝心です。また、体調が悪いときはやめましょう。病気や疾患がある場合は、主治医に相談してからおこないましょう。
もう少し頑張りたい人はプラスαでより高い効果を
- 腹式呼吸
腹式呼吸は簡単にできるリラックス法のひとつです。ある研究では、呼吸法(腹式呼吸)と有酸素運動であるウォーキングを組み合わせ、週2回2ヵ月おこなった結果、うつの症状改善に効果があったという報告もあります。
- 実は運動効果の高いストックウォーキング
2本のポール(ストック)を用いて歩く方法で、ノルディックウォーキングと呼ばれています。ポールを地面について推進力とするため、足への負担が軽減され、無理なく歩幅を広げることができます。また、通常のウォーキングよりも全身の筋肉を多く使うので、エネルギー消費量が20%アップし、メタボや生活習慣病の原因となる中性脂肪値やHDLコレステロール値などの改善効果も大きくなります。
- 水中ウォーキング
水中でのウォーキングは、水の浮力や水圧により筋肉や関節、心臓への負担が少なく、普段運動の習慣がない人にもおすすめ。また、水の抵抗を利用すれば負荷(運動量)をアップすることもできます。