認知行動療法を知る 肉体を動かすことで心を動かす・行動活性化療法(BA)

認知行動療法を知る 肉体を動かすことで心を動かす・行動活性化療法(BA)

気分がよくなる行動を意識的に増やす

私たちは、辛いことや嫌なことがあると、半自動的にネガティブな行動をとってしまうことがあります。たとえば、落ち込んだときは何もする気分になれないので、布団に包まりじっとしている、というように。しかし、そうすることで生活のリズムが乱れたり、ますます落ち込んだりすることは珍しくありません。気分によって行動した結果負のループを繰り返してしまうのです。
行動活性化療法(BA:Behavioral Activation)は、このように気分によって行動するのではなく、行動によって気分を整える方法です。気分がよくなる行動を増やし不快を感じる行動を減らすことで負のループから脱却し、心の病の改善を図ります。1970年代にうつ病の治療法として提唱され、1990年頃から治療効果を裏付ける研究報告が発表されるようになり、近年ではその有効性に注目が集まっています。
薬物療法が服薬で内側(心と肉体)から外側(行動)へとアプローチするのに対し、行動活性化療法は、外側から内側へとアプローチします。たとえば、落ち込んでいたり不機嫌だったりするとき、何も考えず料理をつくると気持ちがリセットする、という人がいます。このように、とにかく肉体を動かすことで落ち込んでいる気持ちを浮上させるのです。「行動」というシンプルで迷わず行うことができる療法であり、一人でも取り組みやすいのが特徴です。また、インターネットなどを利用した遠隔治療でも、治療者と患者さんが直接対話する対面治療と同様の効果が得られることが、大規模な実験から分かっています。このため、外出が困難な高齢者や引きこもりの人でも治療を進めることができます。そして、短期間で成果が得られることも多い治療法です。

<どんな人(状態)に効果が期待できるのか>

  • マイナス思考が強い人
  • 気力を失っている
  • 思考がうまく働かない
  • 引きこもり
  • うつ病

STEP1:活動を記録して自分のパターンを知る

行動活性化療法は、自分にとって気分のよくなる行動(快事象)ネガティブに感じる行動(不快事象)が何かを知ることから始めます。自分がいつどんな行動をしているのか、そのときにどんな感情がどのくらい湧きあがったかを、活動記録表に記入していくのです。たとえば、「6時 起床 ゆううつ6点」「7時 観葉植物の世話 喜び4点」というように具体的に記入します。何か行動を起こしたら、その場ですぐにメモしましょう。

活動記録表の例

  活動 感情
6:00 起床 ゆううつ 6点
7:00 犬の散歩 喜び 4点
8:00 出勤 ゆううつ 7点
9:00 出社 緊張 4点
10:00 上司とミーティング 緊張 3点・不安3点
11:00 データ入力 緊張 5点・ゆううつ 3点
12:00 社食でランチ 楽しみ 2点
13:00 文書作成 緊張 3点・不安1点
14:00  ↓  ↓
15:00  ↓  ↓
16:00  ↓  ↓
17:00  ↓  ↓
18:00 帰宅 リラックス 4点
19:00 夕食 楽しみ 3点
20:00 犬の世話 喜び6点
21:00 テレビを観る 楽しみ 4点
22:00 入浴 リラックス 5点
23:00 スマホでネット 楽しみ 3点・不安 3点
0:00 就寝 ゆううつ 2点
1:00  ↓  ↓
2:00 途中覚醒 不安 4点・ゆううつ 3点
3:00 再就寝 不安1点
4:00  ↓  ↓
5:00  ↓  ↓

これを一週間程度続けると、自分の行動と感情のパターンが見えてきます。上の表の例でいえば、「仕事中は常に緊張を抱えている」「ペットと過ごすと喜びを感じる」というようなことです。
うつ症状が重く、1日中部屋の中にいるようなときでも、何かしらの気持の変化はあるものです。自分の行動と感情の変化を、よく観察してみましょう。

STEP2:快事象を積極的に行う

自分の行動と感情のパターンが見えてきたら、次のステップとして、その中の快事象を積極的に行います。そして、行動の結果を振り返り、快事象はさらに積極的に行うようにします。上記の表でいえば、目が覚めたとたん、会社へ行くことを思い出してゆううつになります。そして、ベッドから起きることに強い苦痛を感じます。しかし、そこで意思を総動員させて犬の散歩に出かけるのです。実際に散歩へ行ったら気分が少し良くなったのであれば、それまでは気が向いたときだけだったのを毎日行くようにするなど、日常生活を改善していきましょう。
このようにして日常生活での行動に余裕が出てきたら、最終的に社会生活での行動へと移っていきます。頭で考えるのと実際に行動するのとでは違っていることは多々あります。行動してみることで、等身大の自分の価値観を明確にすることも大切です。 行動活性化療法は、行動することで治療を進めますが、最終目標は状況に応じた行動ができるようにするものです。ですから、行動が回避になっていたり、不安や焦燥感に駆られての行動では意味がありません今の気分に流されての行動なのか、気持ちを上向きにするための行動なのか、しっかり確認することが大切です。
なお、双極性障害(躁うつ)のうつ状態の場合には、行動によって躁転(うつ状態から急に躁状態になること)が起きる可能性があります。どの程度の行動刺激が自分にとって最適なのか、専門家のサポートを得ながら、慎重に見極めていく必要があります。

Photo via Visualhunt

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