認知行動療法を知る 認知行動療法とは

認知行動療法を知る 認知行動療法とは

認知行動療法とは

「偏った考え」を修正する心理療法

認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)は、人の物事の捉え方や考え方(=認知)の偏りや歪みに焦点を当てた心理分析療法です。パニック障害、強迫性障害、全般性不安障害、自閉症といった情緒障害や気分障害のほか、うつ病、統合失調症など多くの精神疾患に有効であることが実証されており、欧米ではポピュラーな治療方法となっています。
では、認知行動療法とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。実は、私たちはここで最初の壁に突き当たります。インターネットで情報を収集しようとすると、「認知療法」「行動療法」「認知行動療法」「認知療法・認知行動療法」と似たような言葉がたくさん出てきます。そして、それらは何が同じで何が違うのか、自分は何を受ければいいのか、いろいろ読んでもいまひとつ判然としません。そこでまず、認知行動療法を理解するために知っておきたい基本的な用語の意味や定義を整理しておきましょう。

<認知>
物事に対する捉え方や考え方
のこと。ほとんどの人間は、物事をありのままに見るのではなく、ある傾向に基づいて一部分だけを見たり解釈を加えたりしがち(=認知の偏り・歪み)です。それが自分に不都合な認知となると、ストレスや気分障害を引き起こすと考えられています。

<認知療法>
患者(クライアント)の否定的思考による認知を把握したうえで、より適応的・現実的な認知が存在しうることを患者が自覚し、認知を修正していく治療法です。

<行動療法>
好ましくない習慣や癖、恐怖症といった行動上の問題に対し、学習理論に基づく訓練を行うことにより、好ましい行動パターンを習得する治療法です。

<認知行動療法>
認知療法および行動療法を含む、心理療法の技法の総称。ただし、アメリカ以外では上記の<認知療法>と同じ意味で用いられることが多いので、文献を読むときには注意が必要です。

患者本人が主体的に取り組む治療法

薬物療法や物理療法においては、薬の処方や治療器具の操作といった治療の中核部分は医師にゆだねられています。これに対して、認知行動療法は、患者本人が治療の中核に主体的・積極的に参加する療法です。医師や看護師、カウンセラーなど治療者の指導のもと、自分がどんな認知の偏り・歪みを持っているのかを理解し、それを修正するにはどうすれば良いのかを学び、実践し、身につけていきます。このため、いったん修正した認知が身についてしまえば、治療が終わったあとも効果は継続します。薬物を使わないので副作用もありません。また、修正する方法を習得してしまえば、セルフセラピーも可能です。実際、そのための書籍やWebサイトもあります(後日、別ページで紹介予定です)。
認知行動療法は、薬物療法や物理療法に比べると精神力や体力を必要としますが、副作用がなく持続効果の高い療法です。認知を修正するということは、それまで慣れ親しんだ考え方を変えるということですから、当然ながら容易ではありません。一般的な例でいえば、療法1回の所要時間は30~60分で、回数は15~20回ほどかかります。患者自身が論理的に考えたり、考えを整理したりする必要があるため、考えることが難しいほど症状が重い場合は、睡眠や栄養補給である程度まで気力・体力を回復させてから取り組まなければなりません。しかし、今の自分の状態を数値で表現したり、治療記録をつけることから、治療の進捗を把握しやすいという良さがあります。つまり、薬物療法や物理療法は「積極的にゆだねる」治療法であり、認知行動療法は「積極的に取り組む」治療法といえるでしょう。
なお、認知行動療法は薬物療法と併用することで、より高い効果を得られることが研究により確認されています。どちらか一方を受け入れ、他方を否定するということではなく、専門家の適切な指導のもと、必要に応じて併用するのが良いでしょう。

日本における認知行動療法の現状

認知行動療法は、欧米ではごく一般的な心の病の治療法ですが、日本では、まだ十分に理解・活用されているとはいえません。厚生労働省では、医療機関にうつ病治療用の認知行動療法のマニュアルを配布したり、うつ病患者に向けた資料を作成するなど、公的な普及促進の動きが出ていますが、いまひとつです。

厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf

その理由のひとつには、「認知行動療法には興味があるが、誰にかかれば良いのか分からない」ということがあるでしょう。インターネットには情報があふれていますが、医師にかかればよいのか、臨床心理士がよいのか、資格はどうなっているのかなど、選び方の基準を示してくれるものは、なかなか見つからないのです。
2016年6月現在、認知行動療法を行うための公的資格や条件などは定められていません。医師のほか、臨床心理士などのカウンセラーや各種セラピストなども行うことができます。一般社団法人日本認知・行動療法学会特定非営利活動法人東京認知行動療法アカデミーなどの機関が、独自の資格認定を行っていますが、いずれも比較的新しいもので、これらの資格の有無で良し悪しは判断できません。むしろ、ベテランであるほど資格は持っていないことが多いでしょう。結局、療法者選びは口コミなどに頼るしかないようです。
もう一つの理由に「結果的にお金がかかる」ということがあります。2010年から、「医師が実施する1回30分以上の治療について、合計16回まで」という条件のもとで健康保険が適用されるようになりました。しかし、臨床の現場では、1人の患者に30分以上の時間をかける治療は、なかなかできません。2016年からは、教育を受けた看護師がサポートできるようになりましたが、それでも厳しいのが現状です。もちろん、医師でなくても優れた療法者はたくさんいますが、保険適用が利かなくなるため全額自費負担となります。
さらにいえば、「療法自体の種類が多く、何を受けたらよいのか分からない」ということもあります。認知再構成法、暴露反応妨害法、アサーション、マインドフルネス認知療法、弁証法的行動療法などなど、認知行動療法と呼ばれる中には、実に多くの技法があり、何を受けたらよいのかを考えるだけでも一苦労です。
そこで、次からは、認知行動療法のさまざまな技法について説明していきます。

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