認知行動療法を知る 先端脳神経生理学と哲学の融合・マインドフルネス認知療法(MBCT)

認知行動療法を知る 先端脳神経生理学と哲学の融合・マインドフルネス認知療法(MBCT)

ゴールよりもプロセスを重視する第3世代の認知行動療法

マインドフルネス認知療法(MBCT:Mindfulness-based cognitive therapy)とは、「禅」の精神に基づくもので、近年急速に発展している第3世代の認知行動療法の概念です。マインドフルネス認知療法について理解するために、まずは認知行動療法の3つの世代について説明しましょう。
認知行動療法の歴史は、始まりから現在まで大きく3つの世代に分けられます。第1世代(1950年代〜)には、条件反射や学習理論を応用した曝露反応妨害法(ERP)持続エクスポージャー法(PE)などがあり、第2世代(1970年代〜)には、情報処理論に基づく認知再構成法(コラム法)などがあります。これらは、「失敗」や「好ましくない状態」を受け止め、行動や思考を変えていく技法でした。しかし、第3世代では「文脈」や「機能」に着目し、思考と現実の関わり方を変えるという技法を用います。これにより、ストレスの軽減、全般的な幸福感の向上、集中力や記憶力の増加、創造性の向上といった、さまざまな「心の力」を高める効果を引き出すのです。
こうした特徴を持つ第3世代の認知行動療法には、マインドフルネス認知療法のほか、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)弁証法的行動療法(DBT)などの技法があります。(※これらの記事も順次UPしていきます。)

認知を変えず、認知との関わり方を変える

通常、私たちは終わってしまった過去起こっていない未来に意識を向けています。マインドフルネス認知療法は、思考に焦点を当て「今、この瞬間」に集中することに全力を傾けることから心の平安を見出す心理療法です。多くの場合、人は、浮かび上がる思いを解釈したり、価値判断を行うことで認知を歪ませてしまいます。そこで、瞑想にヒントを得て生まれたマインドフルネス認知療法では、起こった出来事や、そこから浮かぶ思考や感情を客観的に観察するトレーニングを行い、すべてを「あるがまま」の現実として受け入れることで認知の歪みを正します。
たとえば、テストの成績が目標以下の50点だったとき、「こんな点数をとってしまって恥ずかしい」とか「勉強ができない私はダメな人間だ」などと考えるのはやめ50点という点数がいいのか悪いのかも考えません。ただ「テストで50点をとった」という事実に意識を集中します。起こった出来事(現実)とそれに対する自分の思考とを区別し、距離を置くことがマインドフルネスの基本的な手法です。
うつをはじめとする心の病の症状は、多くの場合、過去の辛かった体験や未来への不安などのネガティブな思考を反すうすることで引き起こされます。しかし、マインドフルネスを実践し、過去のことも未来のことも考えず、「今」にだけ意識を向けてみると、過去や未来にどんなことがあろうと、「今この瞬間」にはネガティブな事柄は存在せず、ただ呼吸をしているだけだということに気づきます。こうした気づきをさらに深めることで、心の病の症状とうまく付き合っていけるようになります。

<どんな人(状態)に効果が期待できるのか>

  • うつ病(再発性を含む)
  • 全般性不安障害
  • 境界性パーソナリティ障害
  • 物質への依存が強い人
  • 過敏性腸症候群
  • 不眠
  • 対人関係に悩む人

思考により日常生活に支障をきたさないようにする訓練

マインドフルネス認知療法には、主に次のような手法があります。

■呼吸法

呼吸法は、マインドフルネス認知療法の、基本的なトレーニング方法です。トレーニングを重ねれば、「今」に集中する力が鍛えられます。具体的な方法は、次のとおりです。

① 楽な姿勢で座り、背筋を伸ばします。
② 肩の力を抜き、手は軽く膝に置きましょう。視線を斜め下に落とします。
③ 「呼吸をしている」ことに意識を向けながら、ゆっくり5秒かけて息を吐きます。
④ ゆっくり3秒かけて息を吸います。
⑤ ③と④を繰り返し行います。

30分程度続けることが理想ですが、難しい場合は、10分を3セットにしたり、時間を短くしたりしても構いません。無理のない範囲で良いので、毎日続けるのがポイントです。
人間の身体は意識しなくても呼吸ができるため、呼吸に集中しているつもりでも、いつの間にか別のことに意識が向かい、雑念が湧いてくることはよくあります。しかし、その場合も、「うまくできない」とか、「これでは時間の無駄だ」などと判断するのではなく、「雑念が湧いている状態」を認知し、受け入れます。そして、改めて呼吸に集中し直すのです。このトレーニングは、何も考えないことを目標にしているわけでなく、浮かんでくる感情や思考と適度な距離感を保てるようになることが目標です。

■8週間プログラム

8週間プログラムは、うつ病の再発防止を目的としたグループ療法です。3分間呼吸空間法ヨーガなどのマインドフルネス瞑想の実践を中心に、2週間ずつワークをおこないます。また、8週間プログラムに取り組む前には、以下の7つを心に留め実践することが大切とされています。

① 自分自身に評価を下さないこと
(=うまくいかなくても、それについて善し悪しを考えない)
② 忍耐強く行うこと
(=うまくいかなくても続ける)
③ 初心を忘れないこと
(=慣れて雑になってきたら、初日の気持ちを思い出して続ける)
④ 自分を信じること
(=効果が出るまでトレーニングを続けている自分を信じる)
⑤ むやみに努力しないこと
(=効果を求めて無理をしては本末転倒)
⑥ 受け入れること
(=ありのままの自分を見つめる)
⑦ とらわれないこと

 <8週間プログラムの内容>

  • セッション1(第1週):自動操縦状態に気づく
  • セッション2(第2週):うまくいかないとき
  • セッション3(第3週):呼吸へのマインドフルネス
  • セッション4(第4週):現在にとどまる
  • セッション5(第5週):そのままでいる
  • セッション6(第6週):思考は現実ではない
  • セッション7(第7週):自分を大切にする
  • セッション8(第8週):これからに活かす


■マインドフルネスのトレーニングを受けられる機関

東京マインドフルネスセンター
http://www.tokyo-mindfulness-center.jp

■活用できる書籍&アプリ

<書籍>
『実践! マインドフルネス―今この瞬間に気づき青空を感じるレッスン』(出版:サンガ)
『自分でできるマインドフルネス』(出版:創元社)
『書籍図解 マインドフルネス ―しなやかな心と脳を育てる―』(出版:医道の日本社)

<アプリ>
Zenify

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