心の病気のための運動学コラム 第2回 運動と認知機能 〜心の病はカラダ(運動)で治そう!

心の病気のための運動学コラム 第2回 運動と認知機能 〜心の病はカラダ(運動)で治そう!

人は誰でも嫌なことがあると、何もしたくなくなるもの。もし日々の生活がトレスの連続だったら…外出はおろか、歩くことすら億劫になってくるかもしれません。
でもそのようにカラダを動かさなくなることは、心の病気の回復という観点からはとてももったいないことです。
実は運動によって心の病が改善されることが、様々な研究によって明らかになってきています。心とカラダはとても密接な関係があるようです。
あれこれ悩んでいるよりも、ちょっとした軽い運動で、知らず知らずのうちに色々な事ができるようになれるとしたら…試してみる価値があるのではないでしょうか。

運動は認知機能の改善に効果あり

心の病気になると、認知機能が低下することをご存知でしょうか?
認知機能とは見る、聞く、触る、匂いを嗅ぐ、味わうといった五感で捉えた情報を、記憶し、考え、判断する機能のことです。
例えばあなたが外出先で、旅行ツアーのポスターを見て、帰宅後にホームページで詳細を調べ、他のツアーと比較して、そのツアーに申し込んだとします。
ポスターを見たことで、ツアーを申し込むことができたのは、「記憶」「思考」「判断」という認知機能によるものです。しかし、うつ病、双極性障害、統合失調症、PTSD、認知症になるとこの認知機能が上手く働かなくなります。何かをやりたい気持ちがあっても、どうすれば良いのかがわからなくなるので、具体的な行動に移すことが難しくなってしまうのです。

認知機能物事を実行するための根幹となるシステムといえますが、この認知機能の改善に「運動」が効果的であることが、近年の様々な研究で明らかになっています。米国カンザス大学による散歩の歩数と認知機能の関係の調査研究によると、 散歩の歩数が多い人ほどその後の認知力の低下が少なかったそうです。ノースカロライナ大学やUCLAの研究では、運動によって脳の血流が増加し、脳の神経細胞や容積を増加する効果があることが示されています。
国内の研究例では、愛知県の国立長寿医療研究センターが、軽い認知症が認められる65歳以上の高齢者を対象とした以下の調査を行いました。
全体をAとBの2つのグループに分け、Aグループは散歩などの運動を1週間に1度行う。Bグループは全く運動しない。これを10ヶ月間継続しました。その結果、Aグループの方は認知機能や記憶力でBグループよりも良い結果が得られたそうです。
また、筑波大学と中央大学の共同研究グループでは、たった10分間の軽い運動でも、脳の認知機能を司る部分が活性化し、実際に認知力が高まることを科学的に実証することに世界で初めて成功しています。

運動による認知機能の改善により、劇的な改善を果たしたスポーツ選手を一人ご紹介します。北京パラリンピックの自転車競技で、金銀銅の3つのメダルを獲得した石井雅史さんです。
石井さんはもともとは競輪選手として活躍していたのですが、交通事故が原因で重度の記憶障害となり、一時はひきこもるような生活をしていたそうです。
それが、認知機能の改善を目的としたリハビリにより、記憶障害の改善は思うように進まなかったものの、情報獲得や遂行力などその他の認知機能が高まったことで自信を持って生活が送れるようになり、再び自転車に乗れるようになって、ついにパラリンピックでメダルが取れるほどに回復したのです。

なぜ運動で認知機能が高まるのか?

では、運動によってなぜ認知機能が高まるのでしょうか?
それはBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が鍵となります。この物質は、脳の情報伝達に最も重要な働きをする神経細胞を育て、増やし、蘇らせる働きを促すたんぱく質です。脳の活動を支えている代表的な物質と言っても過言ではありません。そして、このBDNF加齢とともにどんどん減っていきます。認知症にならなくても、年をとれば誰もが記憶や学習能力が自然に衰えてくるのはBDNFが減るからです。それに対抗できるのがウォーキングなどの運動です。適度な運動はBDNFを増やし、記憶や学習のパフォーマンスをあげることがわかっています。
また、ウォーキングなどの有酸素運動によって、脳の中で記憶を司る場所として知られている海馬の体積が増えることが、アメリカのピッツバーグ大学の研究で報告されています。
これまでの脳科学では、脳細胞は加齢とともに減少し続け、増加することはないということが常識となっていました。ところが最新の研究では、海馬は何歳になっても神経細胞が分裂し、増え続けることが明らかになっています。
運動によって、脳細胞の栄養素であるBDNFが増え、記憶を司る海馬が大きくなり、その結果、認知機能が高まるという仕組みです。
脳の画像解析術の進歩によって、これまで脳細胞の変化はないとされてきたうつ病やPTSD患者の海馬の萎縮が多数報告されるようになりました。そしてその原因がBDNFの減少によるものであることも判明しています。
つまり、運動によって再生能力のある海馬の神経細胞を増やせば、うつ病やPTSDの症状を改善することができるのです。

おすすめの運動

ウォーキング

最もおすすめの運動はウォーキングです。最初は10分でもOKです。ウォーキングなどの有酸素運動は、精神疲労の回復効果のあるセロトニンを増やす効果があります。

詳しくはこちらのページで紹介しています。
https://7korobi8oki.jp/exercise/walking.html

太極拳

運動が苦手な人におすすめです。動く瞑想とも言われ、太極拳のゆったりとした腹式呼吸が脳のセロトニンの分泌を促すことも知られています。

詳しくはこちらをご覧ください。
https://7korobi8oki.jp/exercise/tai-chi.html

活動的であること

運動はどうしてもやる気がしない。面倒な事はしたくない。そんな方は少しずつ活動的になる工夫が大切です。まずは掃除や洗濯、草むしりや剪定など、日々の生活で身体を積極的に動かすことからスタートです。
また、自分がどのくらい活動的なのかを手軽に計測できる「活動量計」という腕時計のようなデバイスを購入して、自分の活動レベルを計測してみることもおすすめです。心拍数やカラダの動きを感知するセンサーや、自分が歩いたマップまで自動記録されるGPSまで内蔵された機種もあって、昨日より少しでも活動的であることのモチベーションがあがります。ちょっとそこまで歩いて行くことのプラス効果が視覚的に確認でき、達成感もあるので知らず知らずのうちに活動的になっていきます。

編集部おすすめの活動量計はこちら
やや高価ですが、精度が高いです。
https://www.polar.com/ja/products/sport/Polar-A370-fitness-tracker

 

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