心の病気のための睡眠学コラム─第3回 「眠れない」は自殺の危険信号

心の病気のための睡眠学コラム─第3回 「眠れない」は自殺の危険信号

「眠れない」は自殺の危険信号

睡眠障害患者の自殺リスクは通常の21.6

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の「睡眠障害と自殺」についての調査研究報告(2013年度)によると、睡眠障害を患っている人は、そうでない人に比べて自殺のリスクが21.6倍も高いと予測されるそうです。また、睡眠障害が1年以上継続している場合は、そうでない場合に比べて自殺で死亡する確率が11.8倍となっています。ここでいう睡眠障害とは、入眠困難、途中覚醒、早朝覚醒、熟眠困難、昼夜逆転の5つのタイプ。これらは、うつ病統合失調症全般性不安障害といった心の病気の症状としても現れます。このため、自殺念慮や自殺行為は心の病気によるものと捉えられがちでしたが、この報告では、心の病気を伴わないケースでも、自殺との高い関連性が認められると結論づけています。

わずか5日の睡眠不足で脳に変化が

心身の不調からではなく、生活習慣や生活サイクルの乱れで睡眠が不足している場合も、自殺のリスクは高まります。上と同じく国立精神・神経医療研究センターでは、健康な成人男性14名を対象に、2週間のインターバルをはさんで、約8時間睡眠の「睡眠充足セッション」を5日間、約4.5時間睡眠の「睡眠不足セッション」を5日間実行してもらいました。そして、各セッションの5日目に「恐怖」「ニュートラル」「幸福」という3つの表情の画像を被験者に見せ、脳活動の変化をMRIで測定したところ、睡眠不足時には、「恐怖」の表情に対して情動をつかさどる左扁桃体が過剰に反応する傾向が認められたのです。つまり、睡眠不足の状態では、ネガティブな情動が刺激されやすいと考えられます。なぜ、睡眠不足だとこのような反応が起こるのでしょうか?
通常、扁桃体が過剰な反応をしそうになると、扁桃体と強いつながりを持つ内側前頭前野が、それを抑えるように働きます。しかし、睡眠不足状態になると、扁桃体と内側前頭前野のつながりが機能的にも物理的にも弱くなり、その結果として、うまくコントロールできなくなってしまいます。たった5日間、睡眠時間が約半分になっただけで、私たちの脳は、恐怖に過剰反応し、抑うつや不安を生み出してしまうのです。睡眠不足が続けば続くほどつながりは弱くなり、この傾向はますます強くなります。

理由は何であれ「眠れない」を放置するのは危険

2003年8月~2004年12月にかけて、自殺未遂で精神科医のケアを受けた男性93人、女性218人を対象に行われた厚生労働省の調査によると、自殺企図初回の人の84%複数回の人の72%睡眠不足を自覚していました。睡眠導入剤を服用していた人は52%平均睡眠時間は4.6時間精神安定剤を服用していた人は89%平均睡眠時間5.7時間でした。睡眠不足の原因が、睡眠障害なのか、うつなどの心の病気なのか、心身の問題ではなく多忙などで寝ていなかったのか…といったことは不明ですが、いずれにしても、自殺を企図した多くの人が「眠れない」状態にあったことは確かです。5日以上の睡眠不足が続いている人は、改善の取り組みを最優先にすべきでしょう。

睡眠不足の具体的な改善方法を探るために
眠りの悩み克服に向けて」を読んでみてください。

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