心の病気の症状別改善ステップ 解離性障害
改善ステップ:解離性障害
症状と経過
解離性障害は、本来誰もが普通にもっている「私は私である」という認識にぶれが出てしまい、自分の意識や記憶、感情、行動が、自分自身と解離したものに感じてしまう状態です。自分の体が自分のものであるという感覚を得にくくなったり、現実を生きているという感覚に乏しくなったりする「離人性障害」、つらい体験を忘れるために記憶障害が起こる「解離性健忘」、日常性から逃避する「解離性遁走」、自分ではないもう一人の人格が現れる「解離性同一性障害」があります。これらの解離の症状は、たとえばつらい経験を忘れたいときに自己防衛として起こるものでもありますが、日常化すると疾患と診断されます。
解離性障害の治療は心理療法が主体で、症状が起こらず、安心して治療をできる環境を整えたあと、解離性障害を引き起こす原因となっている過去の出来事と向き合っていきます。治療期間は症状によってさまざまですが、比較的時間がかかります。とくに、解離性同一性障害の場合は、複数の人格を統合したり、症状を出さないようにしたりするために数年レベルで定期的にセッションを行います。完治が難しい病気で、いっとき精神療法などによって症状を抑えることができても、また何かのきっかけで再燃することもあります。本格的な治療が終了したあとも、定期的にカウンセリングなどを行ってケアしていくことが重要です。
薬物治療
解離性障害そのものを治療する薬はありませんが、症状として起こり得る不眠やうつなどに対処するため薬を用いる場合があります。とくに、不眠がある場合は、体力が奪われ治療が有効に進まないため、睡眠導入剤などを用います。
非薬物治療
- 心理療法
解離性障害は、原因に心的外傷があることが多い病気です。そのため、心理療法を導入して、心のなかにある解離を招く原因にフォーカスしていきます。とくに、PTSDなど過去誰かに虐待された何か辛い経験があり、トラウマとなっている問題を解消していきます。認知行動療法などがよく用いられます。 - リラクゼーション
心理療法では、過去の辛い体験を掘り起こすことになるため、場合によっては患者にとってとても強いストレスとなります。そのため、平行してリラクゼーション療法を行います。イメージ法、呼吸法、筋弛緩法などによって、安心した気分になってもらうことが大事です。
よりスムーズな回復に向けて
ストレスや過去のトラウマがきっかけで起こることが多い解離性障害。日ごろからストレスに強い心身づくりのため、規則正しい生活を心がけましょう。
- 食事
暴飲暴食はやめて、野菜多めにご飯やたんぱく質をバランスよく取りましょう。朝、食欲がないときにはフルーツなど軽めのものだけでも十分。過度なお酒は控え、添加物がたっぷりのジャンクフードは極力食べないように気をつけましょう。お昼を過ぎたら、カフェインではなく温かいハーブティーにすると、眠りの質にもいい影響を及ぼします。
→「食」とメンタルヘルス「心のための食物学」のカテゴリー を見てみる - 睡眠
朝はできるだけ同じ時刻に起きるようにしてリズムを整え、夜は寝る直前にスマホやテレビを見たり、興奮するような本を読んだりするのはやめて、ストレッチなどをしながら過ごすようにしましょう。寝る前にアロマを香らせるなど、自分にとって眠りの儀式をつくることも、睡眠モードをつくる秘訣です。
→「睡眠」とメンタルヘルス「心のための睡眠学」のカテゴリー を見てみる - 運動
適度な運動を心がけましょう。公園など景色のよいところを散歩する、最寄り駅より一駅手前で降りて歩く、エスカレーターではなく階段を使うといったことや、家のなかでも食事の際はお盆を使わずに何度も往復して料理を運ぶ、雑巾で拭き掃除をするなど、こまめに体を動かすようにしましょう。
→「運動」とメンタルヘルス「心のための運動学」 についても順次公開予定です。
次に、解離性障害のケーススタディ を読む
または、解離性障害の自己診断 [セルフチェック] を読む