パーソナリティ障害を改善した女性

心の病気の症状別改善ステップ パーソナリティ障害

改善ステップ:パーソナリティ障害

症状と経過

パーソナリティ障害(人格障害)は、ものごとに対する考え方や捉え方、感情、衝動のコントロールといったパーソナリティ機能にかたよりが生じる病気です。具体的には、極端な非社交性、他者への過度な依存、異状なまでの規律の尊重など、3タイプ10種に分類されます(詳しくは、自己診断(パーソナリティ障害)参照)。
生物学的要因と環境的要因により形成される病態で、明確な原因は解明されていませんが、適切な治療を行えば治せる疾患です。しかしながら、患者自身が問題行動を自覚して、積極的に医療機関を受診するケースは少ないのが現実です。うつ病や薬物依存などほかの精神疾患と合併し、それらの症状が前面にあらわれたときに受診するケースが多いとされています。若い女性に多い境界性パーソナリティ障害の場合は、自殺未遂や自傷行為をおこなうことがあるため、救急医療機関にて発覚することも。家族や職場など周囲の人たちが医療機関などに相談することで、治療をはじめるきっかけとなることもあります。
治療方法は、パーソナリティ障害のタイプにより異なりますが、概ねカウンセリングなどの薬物治療と非薬物治療になります。非薬物治療は、認知行動療法の一種である弁証法的行動療法が、境界性パーソナリティ障害の治療に有効だと認められています。また、スキーマ療法、STEPPS集団治療プログラムなど、さまざまな治療法が開発されています(このあたりについては、後日詳しい記事を別にアップ予定です)。投薬治療は、補助的に使用されるケースが多いようです。
いずれにしても、比較的長期にわたって治療を続けることが必要で、患者と治療者の協力も欠かせません。患者が積極的に治療に参加し、気長に取り組むことで、半年から1年程度で問題行動が抑えられ、2~3年程度で治療を終えられるようになるでしょう。

薬物治療

パーソナリティ障害の薬物療法では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や感情調整薬、また少量の抗精神病薬が症状を軽くするのに有効とされています。ただし、境界性パーソナリティ障害については、薬の使用方法を誤まると、自殺を図るなどといったケースもあるので注意が必要です。

非薬物治療

    • 弁証法的行動療法
      境界性パーソナリティ障害の治療に特化した認知行動療法のひとつで、同疾患について一定の効果があるとされています。個人精神療法(一般的には週1~2回、1時間~1時間半の面接)、グループスキルトレーニング(週1回3時間半)、電話相談(随時)、治療チームのコンサルテーションミーティング(週1回3時間)のプログラムをおよそ1年かけておこないます。
    • スキーマ療法
      深いレベルの認知(その人の思考パターンの根本にある枠組み)にカウンセリング手法などを用いてはたらきかけ、心の深い部分の傷や苦しみを解消するために考案された心理療法のひとつ。これまでの認知行動療法の限界を超えた効果が期待されています。
    • STEPPS集団治療プログラム
      STEPPS(Systems Training for Emotional Predictability and Problem Solving)は、患者には感情の統制能力に問題があるという仮説に基づきおこなわれる、いわゆるグループ治療プログラムで、20週間の基本的技能の訓練をおこなう集団療法と、1年間にわたり毎月2回おこなう集団プログラムの2段階があります。衝動のコントロールや怒りへの対処法、目標の設定、対人関係行動などの訓練がおこなわれます。
    • 家族療法
      境界性パーソナリティ障害など、親などの家族に要因があるケースが多いタイプは、患者とともに家族も一緒にカウンセリングをおこないます。

よりスムーズな回復に向けて

パーソナリティ障害の原因は、まだ十分に解明されていませんが、育ってきた家庭環境や現在の生活環境の不安定さ、幼少期のつらい経験といった、外的要素が大きいと考えられています。
また、セロトニンや亜鉛の不足による脳機能の低下が深く関連しているという見方もあります。

よりスムーズな回復のためには、日々の生活環境を安定させることを目的とした規則正しい生活、十分な睡眠、セロトニンの生成を増やす食材や、亜鉛を十分に摂取できる食材を使った食事などを心がけると良いでしょう。

「食」とメンタルヘルス「心のための食物学」のカテゴリー を見てみる

「睡眠」とメンタルヘルス「心のための睡眠学」のカテゴリー を見てみる

「運動」とメンタルヘルス「心のための運動学」 についても順次公開予定です。

 

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または、パーソナリティ障害の自己診断 [セルフチェック] を読む

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