心の病気の症状別改善ステップ 全般性不安障害(情緒不安定)
改善ステップ:全般性不安障害(情緒不安定)
症状と経過
全般性不安障害(情緒不安定)は、明確な理由や根拠がないにもかかわらずさまざまなことに不安を抱き、その状態に苦痛を感じる病気です。自分ではどうすることもできない事柄を深刻に悩み、ひどくなると身体に不具合が生じたり、不眠に陥ったりして、日常生活がままならなくなることもあります。人口の5%に見られる病気で、男性に比べて女性の患者数は1.5~2倍。これは、女性特有の生理に加えて、社会の中でのストレスも影響していると考えられます。
全般性不安障害(情緒不安定)は、PTSDや適応障害などのように明確な原因を持たないことばしばしばあります。もともとデリケートで不安を持ちやすい傾向にある人が、過労などがきっかけでセロトニンの働きが不安定になり、発症するとも言われています。全般性不安障害(情緒不安定)の治療には薬物療法と精神療法があり、一般的には、まず薬物療法で不安感を抑えたのち、精神療法で気持ちをコントロールできるようにしていきます。きちんとした治療を受けることで、症状は改善します。
薬物治療
全般性不安障害(情緒不安定)の薬物療法では、不安症状の緩和を目的に、ベンゾジアゼピンなどの抗不安薬を処方しますが、ベンゾジアゼピンは連用すると依存症にやりやすいので注意が必要です。また、セロトニンの働きが不安定になることに注目し、SSRIを処方する場合もありますが、効果が出るまでに時間がかかります。
非薬物治療・療法
- 認知行動療法
根拠がないのに悪いことが起きるに違いないという思い込みや、ものごとの悪い面だけを見てしまう傾向など、全般性不安障害(情緒不安定)で陥りがちな「偏った思考パターン」に焦点を当て、正しく修正していく療法です。自分の考え方がどのくらい現実に沿っているかを紙に書いて比較する「コラム法」などがあります。 - 自律神経訓練法
不安を感じると、人は防衛や逃走の準備として身体に力が入ります。逆に、身体がリラックスしていると、気持ちも自ずと緩んできます。そこで、意識的に身体の力を抜き、ゆっくりと腹式呼吸をすることでリラックスした状態をつくりだし、不安症状を軽減する療法です。1回10分程度で行え、自分一人でも行えます。「自律神経訓練法 動画」などでインターネット検索をすると、音声ガイドが見つかるので、活用するのも良いでしょう。
よりスムーズな回復のために
全般性不安障害(情緒不安定)は、明確な原因が見つからない場合が多く、症状もさまざまです。どこかあいまいな病気だからこそ、スムーズな回復のためには、食事・睡眠・運動で心身を整えるという基本が重要です。
- 食事
近年、レジリエンス(精神的回復力)という言葉が注目されています。多少の不安を感じてもレジリエンスが高ければ、不安にのみこまれず心のバランスを保っていられるという考え方です。レジリエンスを高めるには、脳のエネルギーとなるブドウ糖を3時間ごとに少量補給するのが効果的。ブドウ糖は、白米やパンに多いので、1日3食の間に小さなおにぎりかパンを食べると良いでしょう。
→「食」とメンタルヘルス「心のための食物学」のカテゴリー を見てみる - 睡眠
不安に飲み込まれているときは、身体も不安定になっていることが多いものです。まずは、しっかり睡眠をとって心身を落ち着かせましょう。このようなときは眠れない場合も多いものですが、眠れなくても一定時刻になったら布団に入り、起床時刻になったら布団を出るようにして、規則正しい生活を心がけましょう。なお、レジリエンスが高くなると睡眠の質も向上します。
→「睡眠」とメンタルヘルス「心のための睡眠学」のカテゴリー を見てみる - 運動
「毎日5kmジョギングする」「朝、ひと駅分歩く」など、目標を設定しての運動が、レジリエンスを高めるために有効です。ただし、あきらめずにやり切ることが大切なので、高すぎる目標は逆効果です。
→「運動」とメンタルヘルス「心のための運動学」 についても順次公開予定です。
次に、全般性不安障害(情緒不安定)のケーススタディ を読む
または、全般性不安障害(情緒不安定)の自己診断 [セルフチェック] を読む