心の病気の症状別改善ステップ アルコール使用障害(アルコール依存症)
改善ステップ:アルコール使用障害(アルコール依存症)
症状と経過
お酒を飲みたいという異常な欲求を自分では抑えられないのが、アルコール使用障害(アルコール依存症)という病気です。仕事中や公共の場など本来なら飲酒すべきではない場面でも飲んでしまう、お酒を飲まないと平常でいられない、などという誤認識も特徴で、自分が「病気」だという自覚がないままに飲酒を繰り返すため、心身の健康に異常をきたしてしまいます。
アルコール使用障害(アルコール依存症)の治療は、基本的には入院が必要です。治療ステップは「断酒」から始まり、イライラや不安、手の震えや多汗といった離脱症状が現れますが、3週間ほどで体調が安定してきます。
その後は、飲酒が引き起こす問題を学ぶ「酒害教育」、同じ症状に苦しむ人たちと話し合いながら治療を行う「集団精神療法」、お互いに体験を語り合うことで病気を乗り越える力を得る「自助グループへの参加」といった心理社会的治療を行います。これがリハビリの前期です。リハビリ後期は、断酒を習慣化して社会復帰するための訓練をさせます。一般的に、リハビリはトータルで1カ月半ほどかかります。
アルコール使用障害(アルコール依存症)の克服は、一生にわたって断酒を続けなければなりません。自分の意思だけでは非常に困難であるため、退院後も再発防止のための自助グループの会に参加したほうが良いでしょう。場合によっては半年から1年ほど抗酒薬を服用する場合もあります。
- 認知行動療法
リハビリと並行して行われ、アルコール使用障害(アルコール依存症)からの脱却に大きな成果を上げているのが認知行動療法です。これは、自分の思考や行動のパターンを見直し、修正していくというもので、自分がアルコール使用障害(アルコール依存症)であるということや、飲酒が及ぼす影響を正しく理解し、再発を防ぐための心構え確かなものにし実践を促します。中でも、アメリカで誕生した依存症治療プログラム「リカバリー・ダイナミクス・プログラム」(RD)が、良く知られています。
よりスムーズな回復に向けて
アルコール使用障害(アルコール依存症)の人は飲酒への欲求が何よりも勝るため、食事や運動、睡眠といった健康維持への意識が著しく低下します。したがって、栄養障害や不眠に陥ることも少なくありません。正しい生活習慣を身に付けることが大切ですが、そのためには家族や社会のサポートが必要です。
- 食事
お酒ばかり飲んでまともな食事を摂らないことが多く、アルコールでカロリーは摂取できても栄養が足りていない、という状態に陥りがちです。また、飲酒で胃や肝臓に負担がかかっていることも多いため、消化が良く栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。鉄分や亜鉛を多く含むシジミやカキ、ターメリック(ウコン)を含むカレーなどが、肝臓ケアにはおすすめです。ただし、すでに何らかの障害が肝臓に出ている場合は過剰な鉄分が負担になる場合もあるため、医師の指示に従ってください。
→「食」とメンタルヘルス「心のための食物学」のカテゴリー を見てみる - 睡眠
断酒中の離脱症状の一つに不眠があります。不眠がストレスとなると、さらに飲酒欲求が強くなるので、寝具の見直しや安眠グッズを活用するなどで、できるだけよく眠れるよう工夫しましょう。
→「睡眠」とメンタルヘルス「心のための睡眠学」のカテゴリー を見てみる - 運動
連続飲酒生活で衰えてしまった体力を取り戻し、お酒から意識を放すためには運動も有効です。ウォーキングなどの軽い有酸素運動から始め、体力が回復したら自分が好きなスポーツにも取り組みましょう。ヨガや瞑想も、飲酒への衝動を抑え、自分と向き合うために有効です。
→「運動」とメンタルヘルス「心のための運動学」 についても順次公開予定です。
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