心の病気のための食物学コラム 第6回 マグネシウムが心をサポートする(1)マグネシウムの欠乏がうつや自殺のリスクを高める

心の病気のための食物学コラム 第6回 マグネシウムが心をサポートする(1)マグネシウムの欠乏がうつや自殺のリスクを高める

ストレスが体内からマグネシウムを奪う

マグネシウムは、カルシウムや鉄などに比べるとあまり意識されていませんが、人間とって欠かせないミネラルのひとつ。健康な成人の体内には、約25gのマグネシウムが存在しています。その約半分はカルシウムと結びついて骨組織を形成し、残りは脳、神経、血液、筋肉などの細胞内に分布。300種類以上の酵素の働きをサポートし、たんぱく質の合成、心機能の維持、血圧の調整、神経伝達の制御などの働きを担っています。数多くの生体反応に関わっているため、欠乏するとさまざまな不調が現れます。具体的には、身体的不調として筋肉のけいれん、頭痛、めまい、立ちくらみ、呼吸不全などがあり、精神的不調としては不安感、無気力感、錯乱、記憶障害などがあります。

一方、ストレスが体内から大量のマグネシウムを奪うことも分かっています。私たちの脳は外界からストレス刺激を受けると、「闘う」「逃げる」「固まる」のいずれかで対処しようとします。これらはストレス反応と呼ばれるもので、「闘う」と「逃げる」は急激なストレス反応を意味し、「固まる」は慢性的なストレス反応を意味します。

急激なストレス反応においては、「怒りホルモン」とも呼ばれるノルアドレナリンやアドレナリンが分泌され、自律神経を交感神経優位にすることで、気力や集中力を高めたり、俊敏に行動できるよう筋肉の血流を増やしたり、万一怪我をしても逃げ切れるよう痛みを感じにくくしたりします。しかし、この状態が続くと自律神経のバランスが崩れるため、脳は恒常性を維持しようとして、今度は緊張状態になっている筋肉や血管を弛緩させようとします。このとき、カルシウムとともにマグネシウムが使われるのです。また、慢性的なストレス反応においては、ストレス疲れを起こしている脳をケアするため、コルチゾールという副腎ホルモンが働き、血糖値を上げて脳にエネルギーを供給します。しかし、過酷なストレスでコルチゾールが大量分泌され続けると、今度は副腎が疲労を起こします。そして、この回復にも、マグネシウムが消費されるのです。

脳を毒から守るマグネシウムブロック

さらに、マグネシウムの欠乏は、うつ病と深く関わっているという見解もあります。ある研究では、うつ病患者に毎食後と就寝時に125~300mgのマグネシウムを摂取させたところ、7日未満で症状が回復したという報告がなされています。そればかりか、うつ病に関連・併発する症状で、頭痛、不安、神経過敏、不眠、自殺観念、短期記憶喪失なども改善が見られたそうです。治療抵抗性うつ病自殺企図または自殺未遂経験のある患者は、脳脊髄液中のマグネシウム量が少ない傾向にあるという研究報告もあります。

これらの現象のメカニズムについては、まだ研究段階ですが、グルタミン酸の毒性をマグネシウムがブロックしているのではないかという仮説があります。うまみ成分として知られるグルタミン酸は、神経伝達物質としては記憶や学習など脳の高次機能に重要な役割を果たしています。しかし同時に、特定の状態においては興奮性の神経毒として脳に作用し、パーキンソン病や抑うつなどの疾患に関わっていることも分かっています。通常、こうした毒性作用はマグネシウムイオンによりブロックされているのですが、体内でマグネシウムが欠乏しているとブロック機能がうまく働きません結果的に、うつをはじめ、不眠、自殺観念、記憶障害といったリスクが高まると考えられます。

こうしたリスクを減らすために、私たちがすぐできることは、食事を見直すことです。マグネシウムを多く含む食品には、するめ、干しエビ、あおさのり、ひじき、納豆、きなこ、バナナ、ナッツ類などがあります。普段の食事をチェックして、足りていないと感じたら積極的に摂るようにしましょう。

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