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知る人ぞ知る治療法 音で心身を元気にする「音楽療法」─科学的に認定された“世界一癒される音楽”

宗教とともに生まれた音楽とメンタルヘルスの関係

疲れたときに好きな曲を聴いて癒されたり、アスリートが本番前に気持ちを高めるために聴く曲が決まっていたりするなど、音楽私たちの心に大きな影響を与えています。このように音楽を聴いたり、自分で楽器を演奏したりすることでメンタルヘルスの向上をはかるセラピーが音楽療法です。
音楽はもともと、宗教の誕生と同時に生まれたとされ、儀式や呪術を行うときに用いられてきました。キリスト教における賛美歌も、神を讃える信仰の象徴であり精神的な豊かと安定を与えてくれるとして歌い続けられています。音は、私たちの心に働きかけ、ときに特別な力を引き出してくれる存在だったのです。旧約聖書には、ダビデがサウルのうつ病を竪琴で治したという記述があり、古くから音による心身への治療効果というものが認められてきたのです。近年でも、第二次世界対戦中に米国の野戦病院が音楽療法によって兵士の早期治癒に効果をもたらしたことがわかっており、音楽が私たちの体にどのような生理的作用を及ぼしているのかは現在研究が進められています。

音楽によってホメオスタシスが働く

音楽療法は、音楽を聴いたり奏でたりすることで、人間に備わるホメオスタシス(環境が変化しても体内環境を一定に保とうとする力)が働くようになり、心をリラックスさせる効果があるとされています。それによって、落ち込んでいる人には明るい心を取り戻させ、逆に興奮している人の心は落ち着きを取り戻し安定した精神バランスを保つことに役立つのです。
音楽療法は子供から高齢者まで、またメンタルヘルスから病気の治療まで、幅広い分野に取り入れることができます。医療においても、脳血管障害の後遺症神経の病気による症状の改善や、心の病を抱えた人たちの精神面の安定生活能力・対人関係の改善、また、終末期の人たちの心を支えたり、治療の不安や苦痛を和らげたりするなど、さまざまな分野で活用されています。また、音楽を聴く、音楽を奏でるといった活動は、脳の活性化につながるため認知症予防や、認知症状の改善、また発達障害児の情緒教育などにも大きな期待がもたれています。

音楽療法を受けるには?

音楽療法は、日本音楽療法学会が独自の規定に基づく試験によって認定している民間資格・音楽療法士のもとで行うのが一般的です。また音楽療法にも、オルゴール療法モーツァルトの音楽を聴くものから、楽器を使って演奏する方法などさまざまあります。楽器にも、カスタネットマラカスといった誰でもすぐに取り入れられる簡単なものから、ピアノパーカッションなど幅広いものがありますので、目的や自分に合ったものを選びとることが大切です。
音楽療法士は現在、医療や福祉施設、高齢者施設などで活躍しています。また、病気などではない人に向けたヒーリングミュージックなども、広く音楽療法の一つとして考えられています。治療や症状の改善を目的とする場合は、音楽の知識や医学概論、臨床心理学といった関連領域の知識をもつ、音楽療法士のもとで行うほうが効果的ですが、副作用や心身に無理を強いることのない音楽療法ですから、まずは自分で音楽を聴くということからはじめてみましょう。その時に大切なのは、心に働きかける力のある音楽を聴くこと「ヒーリング音楽」といわれるものがおすすめです。たとえば、モーツァルトの音楽オルゴールの音色などは、音楽療法の一つのジャンルとして確立されています。また、最近ではイギリスの音楽療法学会において科学的に「世界一癒される音楽」として認定された、マルコニ・ユニオンの「Weightless(ウェイトレス:無重力)」という音楽が有名になっています。もちろん、好きな音楽を聴くことも気分転換リラックスにつながりますが、食事に例えると、体調を整えたいのに、好きなものだけ食べて偏食していたら、体のためにはなりません。音楽も同じように、音が持つ癒しの力を理解しようと自分なりに模索し、選びとることがメンタルヘルスの手助けとなります。

 

■科学的に認定された“世界一癒される音楽”(マルコニ・ユニオン「Weightless」)

 

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