知る人ぞ知る治療法「ニューロフィードバック法 」

「望ましい心の状態」を脳波で確認

脳の活動は、一般的には脳波で観察されます。起きているのか、眠っているのか、今どの部分が活動しているのか、脳機能に障害があるかどうか、あるとしたらどの程度か、といったことを、頭皮に電極を付けて電位差を測定することによって把握します。この脳波測定技術を応用したのが、ニューロフィードバック法です。自閉症スペクトラム障害、ADHD、てんかん、うつ病などの脳疾患に対して適用される療法で、望ましい(=症状に悩まされていない状態の)脳波が表れると音と画像でフィードバックを行うことで、脳が自律的に「あるべき状態」を学習するトレーニング方法です。

ニューロフィードバック法のルーツは意外と古く、1960年代にさかのぼります。この時期の脳研究で、リラクセーションのためには脳をアイドリング状態にすることが重要であり、そのためには、脳波を意識的に変化させることが可能であることが分かってきたのです。その後、1980年代には、脳波のフィードバックトレーニングてんかん発作の改善に有効であることが判明し、そこから、さまざまな脳疾患および精神疾患の治療法として活用されるようになりました。現在では、国際児童精神医学会やアメリカ心理学会でも、ニューロフィードバック法が治療法として認められています。また、スポーツや音楽分野におけるパフォーマンス向上の手法としても、一部で取り入れられています。

<ニューロフィードバック法が向いている人>
うつ病、睡眠障害、強迫性障害、依存症、不安障害、自閉症スペクトラム、ADHD、月経前症候群などの疾患を持つ方

反復訓練で脳波を整える「脳の筋トレ」

 ニューロフィードバック法では、通常、両耳と頭皮に電極を装着し、脳波のパターンを測定します。このとき、痛みはまったくありません。また、耳の皮膚や頭皮を傷つけることもありません測定した脳波はコンピュータに取り入れられ、ほぼリアルタイムにモニターで確認することが可能です。治療中、患者さんは、医師などの施術者の指示により、パソコンでゲームを行います。何等かの理由で脳の集中が途切れるとゲームは中断しますが、コンディションが回復すると再びゲームが動き始めます。これを週2回程度、1回につき20~30分間行うことで、脳が自らのコンディションを整えていくのです。こうしたプロセスは、いわば「脳の筋トレ」のようなもの。脳疾患を持つ患者さんを、健常者と同じ(あるいは健常者に近い)脳波状態へと導き脳ができるだけ長くその状態にいられるようトレーニングすることで、症状の改善を図ります。

ニューロフィードバック法は、病院、クリニック、カウンセリングルームなどで受けられます。また、インターネットを通じて施術を受けたり機器を個人で購入しての自宅トレーニングも可能です。ただし、専門家の診察や指導なしでいきなり自宅トレーニングを始めるのは、あまりおすすめできません。他の治療を優先したほうが良いケースもあるかもしれないし、販売している機器も、プロユースからカジュアルなものまでさまざまあるため、専門知識がないと何を選んで良いのかよく分からないからです。関心のある方は、まずは「ニューロフィードバック 料金」などのワードで、対応している病院、クリニック、カウンセリングルームなどを検索し、問い合わせや受診をしてみると良いでしょう。

なお、2017年12月現在、日本におけるニューロフィードバック法の施術に関する公的資格制度はありません。こうしたことから健康保険も適用外となっています。施術に際しては、個々の状態をカウンセリングで見極めた上で行うため、回数は一様ではありません。目安として、およそ20回程度と考えると良いでしょう。費用もまちまちですが、初回(カウンセリングとトレーニング)1~2万円、トレーニング1回1万円前後のところが多いようです。

●日本における関連組織団体

一般社団法人臨床ニューロフィードバック協会
http://clinical-neurofeedback.com/

ニューロフィードバックジャパン
http://neurofeedback.jp/

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