太陽の光を浴びて走る女性

知る人ぞ知る治療法 うつ病治療効果が実証され注目を集める「光治療」

光治療

生体リズムのズレが不調の原因に

光療法は、「乱れてしまった生体リズムを、太陽の光を浴びることで整える」という考え方を基本としています。地球は約24時間で1周しますが、私たちの概日リズム(約1日を周期とする生体リズム)は24~25時間周期となっています。このズレによって生体リズムに狂いが生じることが、さまざまな心身の不調(不定愁訴)の原因になっていると言われています。
光治療は、これまでも、夜眠れなかったかと思えば日中に異常な眠気に襲われる「概日リズム睡眠障害」や、日照時間が短くなる10月~12月頃にかけてうつ症状が現れる「冬季うつ病」に有効であることは知られていましたが、うつ病(大うつ病性障害)への効果は個人差が大きく、その有効性については意見が大きく分かれていました。しかし近年、海外での研究が進み、睡眠障害とうつ病の相関関係(不眠を訴える人の半分にうつ病の傾向がある)が解明されるにつれて、うつ病の治療にも有効であると実証され、注目を集めています。

強い光で生体リズムをリセット

ほんの数百年まえまで、人は日の出とともに起きて活動し、日没とともに休息する生活を送ってきました。このため、概日リズムは日々修正され、睡眠障害に陥ることはあまりありませんでした。しかし、人が電気の強い明かりを自由自在に使えるようになり、社会生活も大きく変わったことで、自然のリズムとは別のサイクルで生活するようになると、概日リズムがなかなか修正されず、不調を起こしてしまうのです。
光療法においては、朝、決まった時間に起床して強い光を目から取り入れることで、体内時計をリセットして概日リズムを整えます。人は、2,500ルクス以上の光を30分~1時間ほど浴びると眠気を司る自律神経が抑えられ、脳と身体を活発化させる交感神経が活発に働いて血圧や体温が上昇し、自然に身体が覚醒します。
毎朝30分~1時間、朝日をあびながら散歩や軽い運動をすれば、それは自然な光療法となります。しかし、忙しい現代人が毎朝30分~1時間の日光浴をするというのは、容易ではありません。そこで、実際の光療法では、5,000ルクスから10,000ルクスの強い光を出す高照度光療法器具を使い、短時間で効果的に光治療を行います。ちなみに、晴れた日中の南向きの部屋で窓際から1m以内の明るさが、3,000~5,000ルクスです。

「併用可能」が最大のメリット

うつ病治療に光療法を導入する最大のメリットは、薬物療法をはじめとするさまざまな療法と併用でき、副作用もほとんどないことです。ある研究では、10,000ルクスで5年間にわたり1,000時間以上の照射を行っても、重大な副作用は出なかったことが報告されています。また、相乗効果が期待できるのも大きなメリットです。特に、運動との併用は、睡眠障害の改善に大きな効果が期待できます。一方、デメリットとしては、紫外線で日焼けをしてしまうこと、効果の出方は個人差が大きく、すぐに効果が現れる人もいれば長期間治療を続ける必要がある人もいることなどが挙げられます。
光治療を行う際は、必須アミノ酸の一種である「トリプトファン」の摂取が促されます。うつ病は神経伝達物質「セロトニン」の分泌が低下することで発症しやすくなるため、セロトニンを生成するための原料になるトリプトファンを積極的に摂取することで光治療の効果を高めることができるとされています。トリプトファンを多く含む食品としては、牛のレバーや豚のロース、パスタ、チーズ、バナナ、豆乳、納豆、そば、ゴマなどがあります。

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