絵を描く、ちょっと人生を変えてみる

絵を描く、ちょっと人生を変えてみる【おすすめ本紹介】

永沢まことさん をご存知ですか?
彼の本を読むと、絵を描いてみたくなるのだそうです。
編集部スタッフのひとりも、
『絵を描く、ちょっと人生を変えてみる』という本に出会って、
そんな体験をしたといいます。

【編集部スタッフの感想コメント】
私はもともと絵を描くのが好きでした。
子供の頃は毎日まんがを描いて過ごし、
大人になってからは水彩でイラストを主に描くようになりました。
「絵を描く人」というと絵が上手な人、本人も絵を得意としていると思われるかもしれませんが、
私は図工の成績もそんなに良くはなかったし、自分で絵がうまいと思ってもいませんでした。
空想や、頭の中に浮かぶ「現実にはないもの」は得意な方でしたが、
人間を描けばまんがっぽくなってしまうし、
遠近法がうまく使えなくて風景を描くと辻褄が合わなくなるなど、
とにかく「何かを見て描く」ということが苦手でした(これは今もです)。
だから絵を描くことが好きなのにもかかわらず、
「自分は絵が下手」というコンプレックスを、実は今でも抱えています。

そんな私がこの本に出会ったのは、長女がまだ1歳か2歳の頃だったと思います。
初めての子供で勝手がつかめず手がかかり、仕事もしていて、主人の帰りも遅く、
毎日忙しくて、ともすると心をなくしてしまいそうな時期でした。
絵を描きたくても、時間がない。絵の具を出したりしまったりするのも面倒だし、
絵は時間と心に余裕のある状態で描きたいという気持ちがあったので、
こんなに忙しかったら描くことはできない、と思い込んでいたのです。
それは、私にとってとても苦しいことでした。

そんな時、ペンでスケッチすることを薦める内容のこの本を本屋さんで見つけました。
スケッチをすることに対してはとても憧れがあったのですが、先に書いたように、
「ものを見て描く」ということに苦手意識があったので、あまりやっていませんでした。
タイトルに惹かれて開いてみたこの本は、絵が苦手と思っている人も、
とにかく深く考えずにスケッチしてみて

と提案していました。それも、うまく線が引けなかったら消しゴムで消せる鉛筆でではなく、
いきなりペンで描くという手法でした。
最初は「まさか」と思いました。私がものを見て描くときは、
何度も線を描いては消し、それでも納得いくものが描けた記憶がほとんどなかったからです。
だからいきなりペンで描くなんて無理、とはじめは思いました。
でもこの本を読むうちに、なんだか描けるような気がしてきました。
「うまく描ける」気がしたのではなく、
「描きたいんならなんでもいいから描けばいい」という気持ちになったのです。
その時の感覚を今も憶えています。
「なんだ、こんなに余裕がなくても描けるんだ。これでいいんだ。」と、
無理に堰き止めていたものが流れ出したような感じでした。
またこの本はよくある絵の技巧書ではなく、
著者がどのようにしてこの本で紹介しているような絵を描くに至ったか、
どうしてペンでいきなり描き始めるのか、
それがどんな風に人生に影響してきたかなどが軽快に書かれていて、
エッセイとしても面白く、
半分ほど読んだ頃にはもう自分も描いてみたくて仕方なくなったのです。

その後、絵を描くことと心の関係について興味を持った私は、
色彩心理を学ぶためにセミナーに通ったり、仕事と家事の合間に絵を描くこととの付き合いを続け、
数年して個展やグループ展などで絵を発表する機会を得ました。

心が窮屈だった時期に出会ったこの本は、
私にいろいろな可能性の種を植え付けてくれたのかもしれません。
無理と思い込んでいるものも、発想の転換でいつでもはじめられるということを、
この本は私に体験させてくれ、心を少し楽にしてくれたように思います。

『絵を描く、ちょっと人生を変えてみる』(永沢まこと著)は、現在入手困難のようですが、
この書籍の加筆・修正版として、『絵が描きたくてたまらない!』が刊行されています。

永沢まこと『絵を描く、ちょっと人生を変えてみる』講談社刊

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