「疲れは魔物」その3:睡眠不足が引き起こす病気

たかが寝不足、されど寝不足。睡眠不足が病気の原因になる

「多少の睡眠不足は頑張っている証拠」などと、忙しい人、真面目な人ほど、寝ることよりも目の前の仕事ややるべきことに一生懸命睡眠時間を削ってしまっているかもしれません。
若いうちには無理がきいても、睡眠不足が続くと確実に心身にダメージが溜まっていきますたかが睡眠、されど睡眠。寝不足は病気を招きます。忙しい人ほど、眠ることをおろそかにしないことが、健全なメンタルヘルスや肉体の健康のために大切なのです。

睡眠と直接的に関わる2つの病気があります。1つは、睡眠時無呼吸症候群です。中高年で肥満の男性に多く、睡眠時に喉の気道が塞がり、呼吸が10〜20秒ほど止まってしまうという病気です。大きないびきをかいていたかと思いきや突然呼吸が止まる。そんな家族の姿を見たことがある人もいるかもしれません。睡眠無呼吸症候群の問題は、呼吸が止まることで苦しくなって目が覚める、睡眠質が下がるといったことが起きるほか、酸素不足によって心拍数が上がり、脳や体への負担が大きくなります。
もう1つが、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)です。原因は明らかになっていませんが、寝ているときに脚に虫がはうような感じのかゆみやムズムズ感が起こり、気になって睡眠が妨げられてしまいます。こちらは、中高年の女性に多い傾向があります。

この2つの病気は、睡眠環境に悪循環を招き、睡眠不足を助長させることで、ほかの病気の引き金にもなるため、症状が見られる人は早めに対処するようにしましょう。

睡眠不足は生活習慣病を招き、重大な疾患へと発展することも

睡眠不足がなぜ生活習慣病につながるのか。それは肥満と大きく関係しています。睡眠不足によってレプチンという食欲の抑制効果のあるホルモンの分泌が減り、食欲増進ホルモンであるグレリンが増えます。また、ストレスによるダメージから体を守るコルチゾールというホルモンは、脂質や糖質を分解してエネルギーをつくりますが、睡眠不足や睡眠の質が低下すると、コルチゾールが分泌されず、糖分や脂肪の分解がされなくなります。結果として、太りやすく痩せにくい体質を加速させ、体質高脂血症、高血糖の状態が慢性化するようになっていきます。

高脂血症による血管のつまり心筋梗塞脳梗塞高血糖糖尿病の原因となりますから、睡眠不足によって体が正しく修復、機能しない状態が続くことは、心身のあらゆる面に問題を引き起こしてしまうのです。

また、睡眠不足が続くと、免疫力が低下します。免疫力が低下すると、腎臓や肝臓といった、老廃物をろ過して体外に排出したり、毒素を分解したりする機能にも悪影響が出てダメージを増やしていきます。腎臓が弱まると、体がむくむ、だるいという状態から腎臓病へと発展します。肝臓は、糖をグリコーゲンに分解する働きもありますから、睡眠不足で高血糖の状態が続くと働き過ぎでどんどん疲弊してしまい肝臓病へとつながるのです。

睡眠不足とメンタルヘルスの関係

うつの予防などメンタルヘルスにおいても睡眠は重要な関わりをもちます。そもそもうつ病をはじめ、精神疾患には睡眠障害が症状として現れることがあるほか、睡眠不足によって脳の働きの低下疲労の蓄積精神疾患を引き起こすという相互関係にあります。

また、アルツハイマー型認知症睡眠不足が関係します。寝不足によって、脳が休まらない、細胞の修復が十分にできない状態が続くと、アミロイドβという悪玉のたんぱく質が分解されず溜まっていき、海馬が縮小します。海馬は記憶を司るため、記憶力の低下が慢性的になり、発病へとつながるのです。

少しの睡眠不足ならカバーできると思って、つい無理をしてしまうことも多いかもしれませんが、ただ眠れないだけでこれだけの病気との関連が考えられるわけですから、毎日の睡眠の質を見直し、心身にとってストレスのない生活を心がけましょう。

 

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