『動物の箱舟』【おすすめ本紹介】

これまで、ヒト以外の生き物に、関心を持ったことがなかった。
自然番組もときに観たけれど、どこか違う世界の物語のようだった。
正直、あまり関心を持てずページをめくった。

鮮烈なビジュアルに圧倒された。見慣れない、奇妙な姿・形に、大いに戸惑った。
今までの動物写真集と違う。
これは、私たちの姿だ。笑い、驚き、怒り、安らぐ。毒も吐けば相手を欺く。
一見抵抗ある異形の奥に、ユーモラスな表情を見せる奴。常識外れ・異端児・はぐれもの。
著者は、それらの生き物すべてに愛を注ぐ。世間に評価されにくい特性の生き物を、大切にする。

読んでいて気がついた。
私が生き物に関心を持たないことと、人とハートフルに関われないことに、何かつながるものがある、ということを。
著者は言う。「知らない生き物には愛着を感じにくい。だからこそ動物に出会い、先入観なくその姿をしっかりと見つめる機会を持ち、理解してほしい」と。
好みではない姿かたち。世の常識の枠に収まらないものたち。どれほどちっぽけでも、異様に見えても、「すべては奇跡にあふれた貴重な存在」なのだ。
自分に似たもの・価値観が近いものだけを求めていったら、最後は「どちらを向いても目に入るのは自分たちばかり」の世界になる。都合の悪いものは見捨ててもやむなし、と。

すべての生き物は、数千万年前の進化の歴史とつながっているということ。思いがけない動物種が親戚同士だったりすること。絶妙なバランスで共生していること。大量絶滅が進んでいること。その原因の多くはヒトにあり、しかし希望への影響力も大きいこと。
改めて驚きと溜息、新鮮な戸惑いとともに読み進めることができた。
思いがけない本との出会いに、感謝している。

生き物に興味がない人にこそ、この本を手に取ってほしいと思う。

 
著者(写真・文):ジョエル・サートレイ
書名:『動物の箱舟』 出版社:ナショナルジオグラフィック社 3,960円(税込)

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